JASPICはソフトウェアプロセスの改善に関する研究、普及活動を行っています

SPI Japan 2006

SPI Japan 2006
– ソフトウェアプロセス改善カンファレンス2006 -
「今、現場が求めるプロセス改善!」


■日程:
2006年10月11日(水)PM チュートリアル
2006年10月12日(木) ~ 10月13日(金) 本会議
■場所:
つくば国際会議場
■主催:
日本SPIコンソーシアム(JASPIC)

今日、ソフトウェアは社会・産業システムを支えるインフラとしての役割を担うだけでなく、さまざまな工業製品の高機能化を推進するキーファクターとしてそ の重要性がますます高まっています。これに伴い、ソフトウェアの多様性、複雑性、規模は飛躍的に増大し続け、国際的な競争の激化が、この傾向に、ますます 拍車をかけています。このような状況下でソフトウェアの高品質を維持するには、ソフトウェアの開発プロセスを継続的に改善していく以外に道はありません。JASPICは、様々な組織におけるソフトウェアプロセスの改善と、それに伴うプロセス評価に関する研究、技術移転、普及活動や国際交流などに取り組んできました。

日本における、こうしたプロセス改善活動で得られた技術や知見を集大成し、技術力向上と普及の場として、SPI Japan 2006を開催します。SEPGの方だけでなくより多くの方にプロセス改善に参加していただきたいという思いを込めて、今年度から、名称を「SEPG Japan」から「SPI Japan」に変更することにしました。本カンファレンスの開催は、2003年より4回目となります。

今年のテーマを「今、現場が求めるプロセス改善!」としました。4回目となる今回をターニングポイントの年と位置づけ、「過去のプロセス改善活動を振り返り、これからのプロセス改善活動の方向を探る」機会になれば、との思いを込めたテーマです。過去3回のカンファレンスでは、各組織が積み上げてきたソフトウェア開発プロセス改善活動の経験や知見、および事例が活発に発表されました。 また、JASPICの様々な活動成果も徐々に蓄積・共有化され、その成果が、あますところなく発表される仕組みが確立されてきています。 今回は、各組織のプロセス改善活動をここで一度振り返り、更に「現場に役立つプロセス改善活動」を目指して、「この先に何を求めるか/何が必要か」について、有益なヒントが得られる場になると自負しています。 

プログラムの概要は、以下の通りです。

今年の基調講演は、北陸先端科学技術大学院大学(JAIST) に客員教授として滞在中の Dines Bjorner先生をお招きし、「The “Triptych” Process Model」と題して、お話しいただきます。この講演は、「ドメイン工学」、「要求工学」、「ソフトウェア設計」の3つのフェーズを概観し、各フェーズのステップに関する説明、さらに、自然言語による下書き・記述と形式記述、それらの記述の正しさの検証(verification)と妥当性の検証(validation)、のバランスの重要性にも言及するものです。なお、講演は英語で行なわれますが、サマリ通訳およびコメンテータとして、同じく北陸先端科学技術大学院大学の二木厚吉先生にもご協力いただきます。

一般発表は、今年度のテーマである「現場」の事例を中心に、30件の発表で構成いたしました。「現場の事例」、「プロセス改善の本質とは」といった、今、まさに実際現場が直面している課題のヒントになる発表や、「プロジェクトマネジメント」、「委託・オフショア開発」など、最新のプロジェクト運営に関するセッションも設けました。

また今年はじめての新しい試みとして、プロセス改善の分野における学界との技術交流および技術移転を活発にすることを目的として、産学連携セッションを企画しました。ソフトウェア工学のさまざまな領域で活躍されておられる大学の先生方6人をお招きして,それぞれの研究分野における課題や今後の展望についてご講演いただきます。

さらにチュートリアルとしては、
 清水吉男氏((株)システムクリエイツ)による「仕様化する技術、表現する技術」
 JASPIC SPC分科会による「データに基づく実証的プロセス改善の勧め - 科学的にいこう!」

パネルディスカッションについては、
 現場の第一線でご活躍されている方々をお迎えし、「今、現場が求めるプロセス改善!~笑顔があふれる現場へ」と題した、現場に密着したテーマによるディスカッション

と、盛りだくさんの内容で開催いたします。皆様のご参加を、心よりお待ち申し上げております。

【プログラム】

10月11日(水) チュートリアル

時間 内容

13:00-13:30

受付

13:30-16:30

◎チュートリアルA(大会議室101)
「仕様化する技術、表現する技術」
(株)システムクリエイツ 清水 吉男

◎チュートリアルB(大会議室102)
「データに基づく実証的プロセス改善の勧め - 科学的にいこう!」
JASPIC SPC分科会 小室 睦(日立ソフト)

◎チュートリアルA「仕様化する技術、表現する技術」

内容:
今日、ソフトウェア開発において要求仕様書のあり方が問題になっています。というよりも、そこに問題の根源があることに気付きはじめています。そして幾つか の文献も出版されています。でも、残念ながらすぐにも現場で使えるものは多くありません。それらの方法は、「要求の発見」に重点が置かれているからです。 今回のチュートリアルでは、要求をどのように表現するかというところに重点を置き、そこから要求の発見と洗練を組み合わせる方法を紹介します。これは、講 師自身が独自に考案し、長く実際のソフトウェア開発現場の中で成功を重ねてきた方法です。

「要求」の意味や役割の認識によって「要求仕様書」の意味が変わってしまいます。「要求」を表現することの意味もそこから出てくるのです。従来の要求仕様書は “仕様”が表現されていないため、「具体的な仕様は設計作業の中で抽出するもの」という神話を支える結果となってきました。でも「要求」を適切に表現し、 「要求」と「仕様」を階層の中で捉えることで、要求仕様書の段階で「仕様」の抽出がスムースに運ぶのです。本チュートリアルでは、要求を表現することに よって仕様が引き出される様子をお見せできると思います。また、要求の「枠」があることで、仕様化の作業を分業しても崩れません。これは規模の大きなソフ トウェア開発には不可欠な要素です。

この他、要求仕様書の変形として、画面仕様書のあり方や、組み込みシステムで問題となっている派生開発(保守開発の一種)における要求仕様(変更要求仕様書)のあり方についても触れる予定です。

対象者:
要求仕様書は、メーカーやユーザー側のいわゆる発注側の人が書くケースと、ベンダーあるいは受託する側の人(設計者)が書くケースがあります。今回のチュー トリアルでは、発注側や受託側に関係なく、要求仕様を作成する立場にある方、要求仕様書の内容を評価し、それを承認する立場の方を主な対象としています。 また、こうして書かれた要求仕様書の内容を理解してそれを設計して実現する立場にある方にとっても、現状の要求仕様書の問題やそこから発しているトラブル を回避する方法に気づかれるかと思います。

◎チュートリアルB「データに基づく実証的プロセス改善の勧め - 科学的にいこう!」

内容:
本チュートリアルの開かれるSPI Japan(旧 SEPG Japan)に は毎年、たくさんの参加者があります。これは、ソフトウェア開発に対するプロセス改善運動が日本でも注目され、着実に広がっていることの証しだと思います。しかし、改善がいつもうまくいくわけではありません。例年の発表で(そして多分今年の発表でも)よく聞く失敗例は、プロセス改善運動が形骸化、形式化 してかえって現場の負担になってしまうということです。

明確な見通しや方向付けを持たずに始めた改善はすぐに迷走してしまいます。最初は熱い気持ちをもって始めた改善であっても、適切なフィードバックがないと 「改善のための改善」というわなに陥ってしまいます。このような現状には「形から入る」「お手本をまねする」といった日本人の国民性も影響しているものと 思われます。

ところが、一方で、”Kaizen”という言葉が英単語としても通用するように、日本は改善活動で最も成功した国でもあるのです。すなわち、製造業の品質改善活動においては、デミング博士の教えに基づいた統計的な品質管理手法が大きな成功をおさめ、現在の日本の経済発展の礎となりました。ここでは、「まじめにきちんと実行する」「教育程度が高く、特に数字に強い」「個人の改善意識が高く、みずから工夫をする」といった日本人のよい面が強くあらわれています。

では、何故、製造業での”Kaizen”が ソフトウェア開発でのプロセス改善に直ちに結びつかなかったのでしょうか?これは単純ではない問題ですが、一つには製造業での改善が「品」質改善という言 葉に端的に表現されているように、プロダクト中心の考え方に支配されていたことがあると思われます。また、製造業で大きな成功をおさめすぎたために、その 形式や手法にこだわってしまい「科学的、実証的な方法に基づき改善をすすめる」という根本精神に十分立ち返って考えることができなかったこともあるように 思われます。

本チュートリアルではJASPIC SPC(Software Process Control、ソフトウェアプロセス制御)分科会での会員各社による議論、検討成果を基に、データ分析に基づく実証的なプロセス改善をソフトウェア開発に適用するにはどうしたらよいのか、そのコツを伝えたいと考えております。

具体的には以下のようなトピックにふれる予定です:
(1) 測定・分析・プロセス制御に関する実例とその分析
 主にピアレビューのデータをもとにプロセス制御の考え方と適用の実際、またその利点を解説します。
 また、R言語で書いた分析ツールによるデモを実施します。
(2) SEPG向けのデータ分析入門
 (a) 科学的、実証的方法の重要性:TQMやSPCの目指すもの
 (b) ソフトウェア開発に役立つ統計学入門
  ・ソフトウェア開発に適用する際の留意点
   ビジネスゴールとの関係、GQM
   プロセスの重要性(プロセス vs. プロダクト、予防 vs. 対症治療)
  ・「七つ道具」とその適用例、特に管理図
  ・改善効果を示す方法(検定、ベースライン、モデル)
  ・その他の手法
   (例)TSP/PSPで使われている尺度と分析方法、他分野で使われている手法

対象者:
・プロセス改善のためのロードマップを知りたいと考えている改善担当者/管理者(SEPG)
・高成熟度をめざしている組織のプロセス改善担当者/管理者(SEPG)
・改善効果をどう示すか、悩んでいるSEPGの方
・改善効果に疑問を持っているため、プロセス改善を開始すべきかどうか迷っている上位管理者

10月12日(木) 本会議

時間 内容

09:00-10:00

受付(終日)

10:00-12:00

◎オープニング(大ホール)
挨拶:林 香(SRA)

◎基調講演(大ホール)
The “Triptych” Process Model(「三面画」プロセスモデル)
Dines Bjorner(北陸先端科学技術大学院大学)
通訳:二木厚吉(北陸先端科学技術大学院大学)
日本語版
論文版

12:00-13:30

昼食休憩

14:00-15:30

◎セッション1A(大ホール)
「現場の事例」

SPIの新たな可能性の提言~デバイス開発組織におけるSPIを応用したプロセス改善~
桑理 聖二(オムロン)

小規模組織へのPeople CMMの適用によるチームの活性化についての事例
たら沢 健志(富士ゼロックス)

現場を納得させる改善
川崎 浩一(富士ゼロックス情報システム)

◎セッション1B(大会議室101)
「プロセス改善の本質とは」

プロセス改善もアジャイルでいこう
森田 祥男(ソニー)

開発者による開発者のためのプロセス改善
北村 秀生(東芝インフォメーションシステムズ)

プロセス改善の現場三原則
宮下 洋一(NECシステムテクノロジー)

◎セッション1C(大会議室102)
「産学連携」

ソフトウェアプロセス史観の変遷と展望
玉井 哲雄(東京大学)

ソフトウェア開発方法論とプロジェクト管理の融合法に関する考察
落水 浩一郎(北陸先端科学技術大学院大学)

15:00-15:30

休憩

15:30-17:00

◎セッション2A(大ホール)
「現場の事例」

海外拠点との共同プロセス改善
館岡 美奈子(横河電機)

品質保証部門における品質管理プロセスへの早期改善アクション取り組み事例
下山 一樹(日立システムアンドサービス)

大規模テスト可能な新テスト手法の開発と実用化に向けた改善事例
時井康博(オムロン)

◎セッション2B(大会議室101)
「プロセス改善の本質とは」

ワークショップをベースにしたプロセス改善活動~開発現場の問題点を出発点とするために~
小笠原 秀人(東芝)

「現場力を組織力へ」 -ものづくりへのプロセス適用支援での一考察-
片山 和晶(NTTデータ)

体験報告「コスト不要!モチベーション向上のヒント」
阪本 太志(東芝デジタルメディアエンジニアリング)
(プログラム委員長賞受賞)

◎セッション2C(大会議室102)
「産学連携」

ソフトウェアの信頼性とプロセス
菊野 亨 (大阪大学)

開発作業履歴の多元的インタラクティブ可視化
中小路 久美代(東京大学)

17:00-17:30

休憩

17:30-19:30

◎情報交換会(多目的ホール)

10月13日(金) 本会議

時間 内容

09:00-09:30

受付(終日)

09:30-11:30

◎セッション3A(大ホール)
「プロセス/可視化」

SoC(System on Chip)におけるFirmware開発の進捗可視化の試み~EVM(Earned Value Management)を現場に適用して~
永地恒一(ソニー)

ソフトウェア・プロセス改善の投下資本利益(ROI)についての考察
大嶋正博(アルゴ21)

ソフトウェアの質と量をリスク管理するためには>
倉持晃一(ソフトウェア・サイエンス)

標準プロセスの検討におけるプロセス・モデルの活用事例>
静永誠(宇宙航空研究開発機構)

◎セッション3B(大会議室101)
「SPI経験」

プロセス改善活動の立ち上げと定着~成功の秘訣は効果的なアセスメントの制度化
安倍秀二(松下電器産業)
(最優秀賞受賞)

アジャイルなSPIの提案
前田実香(インテック)

プロセス改善を通して知らされたこと~定量的設計品質管理の導入を振り返って~
生田英明(日立製作所)

組み込み開発現場でのSPI活動について ~SPI活動 before/after ~粟野光一(ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ)

◎セッション3C(大会議室101)
「プロジェクトマネジメント」

「短納期ソフトウェア開発を失敗させないための7つのヒント」
岩見好博(オリンパス)

プロジェクトマネジメントにおける笑力分析
丹羽武志(インテック)

ソフトウェアプロセス&ソフトウェアプロジェクト・マネジメント協調論~ SPIは適切なマネジメントが行なわれている組織にのみ存在する~
高橋裕之(ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ)

プロジェクトをゴールの見えないマラソンとしないために
岩見好博(オリンパス)

11:30-13:00

昼食休憩

13:00-14:30

◎セッション4A(大ホール)
「委託・オフショア開発」

オフショア開発を成功させるためのSEPG活動
杉村宗泰(ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ)

オフショア開発に有効なプロセス改善とは~押し寄せるオフショアの波に挑もう!~
飯坂正樹(ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ)
(実行委員長賞受賞)

品質が向上できる外注先開発プロセスの確立
権正治好(富士ゼロックス(株))

◎セッション4B(大会議室101)
「SQA」

SQA活動の定量的管理
早川一夫(ジャステック)

「SQAはお医者さんで伝道師」~開発現場の安定感向上へのアプローチ~
水田恵子(パナソニック エレクトロニックデバイス)

品質保証のパラダイムシフト ~ プロダクト志向からプロセス志向へ
高橋一郎(日立ソフト)

◎セッション4C(大会議室102)
「産学連携」

テストの改善、テストによる改善
西康晴(電気通信大学)

実証的ソフトウェア工学とEASEプロジェクト
井上克郎(大阪大学)

14:30-15:00

休憩

15:00-16:30

◎パネルディスカッション(大ホール)
「今、現場が求めるプロセス改善!~笑顔があふれる現場へ」
司会: 砂塚 利彦(砂塚コンサルティングサービス)
パネラ:飯泉 紀子(日立ハイテクノロジーズ)
     尾崎 亜由美(パナソニック コミュニケーションズ)
     鈴木 郁子(シャープ)
目的:現場が納得し、現場と推進者が協力してプロセス改善できるために何が必要かを探る
概要:プロセス改善は、組織のビジネスゴールを達成するために現場と推進者が協力し、かつ継続的に行うことが必要です。その結果、笑顔があふれる現場にしたいと思いませんか?
そんな思いを実現するためのヒントを得るために、現場の近くでご活躍のパネラの方と議論を交わしていきます。
●組織のビジネスゴールに現場のベクトルを如何に合わせるか
●改善へのモチベーションをどう高めるか
●ムリのない仕組みになるようにどう参画してもらうか など

15:00-16:30

◎クロージング(大ホール)

【参加申込】

※2006年10月3日(火) 17:00をもって申し込み受け付けを終了させていただきました。

【事務局連絡先】
日本 SPIコンソーシアム 事務局
info@jaspic.jp
〒160-0004 東京都新宿区四谷3丁目12番地 丸正ビル5階
(株)SRA先端技術研究所 内
03-3357-9011(tel)
03-3351-0880(fax)

【カンファレンススタッフ】
SEPG Japan 2006 実行委員長
林 香(SRA)

同補佐
和田 典子(ソニー)

SEPG Japan 2006 プログラム委員長
田村 朱麗(東芝)
馬場 尚子(SRA)
宮脇 祥子(特別会員)

SEPG Japan 2006 プログラム委員
青山 輝幸(富士ゼロックス)
安倍 秀二(松下電器産業)
井之内博夫(オムロンソフトウェア)
今井 眞紀(ニコンシステム)
岩見 好博(オリンパス)
遠藤 潔(日立ソフトウェアエンジニアリング)
大沢 悟(富士通)
阪本 太志(東芝デジタルメディアエンジニアリング)
白井 保隆(東芝)
菅原 耕一(富士写真フイルム)
高野 明(日立システムアンドサービス)
早川 一夫(ジャステック)
林 達宏(日本アイ・ビー・エム) 渡邉 雄一(SRA)

SEPG Japan 2006 事務局
乗松 聡(乗松プロセス工房)
松村 好高(SRA先端技術研究所)
林 好一(SRA先端技術研究所)
石川 晶子(SRA先端技術研究所)

・CMM®及びCMMI®は、カーネギーメロン大学により米国特許商標庁に登録されています。
・SEPG、PSPおよびTSPは、カーネギーメロン大学のサービスマークです。

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