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◆ JASPIC メルマガ 2025年10月号 ◆
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本メルマガでは、定期的に日本SPIコンソーシアム(JASPIC)主催のイ
ベント情報やJASPIC関係者によるコラム等をまとめてお伝えします。
* SPI(Software Process Improvement):ソフトウェアプロセス改善
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◆目次
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1. これから開催するイベント
2. コラム:林 好一(Y's Workshop)
「再利用可能な知識」
3. SPI Japan 2025 実施報告
4. SPI Japan 2026 のご案内
5. 会員募集
6. コラム執筆者募集
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◆1. これから開催するイベント
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●JASPIC例会(JASPIC会員限定です)
日 時:2025年11月6日(木) 13:30-17:20(予定)
内 容:1. 会員企業事例発表
・パナソニック
・NECソリューションイノベータ
2. ディスカッション
3. SPI Japan 2025報告
4. カンファレンス報告(Euro SPI、SQiP)
5. ショートプレゼン
6. 外部講演
・生成AIを利用するシステムの安全性評価を支援する
テスト観点表の提案
・アジャイルジャパンの講演を予定
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◆2. コラム:再利用可能な知識
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システムエンジニアリングの基本を学んでもらう研修を何人かで手掛
けている。今は5期目がもうすぐ終わるところ。そこで多くの受講者
達が、演習で要求仕様を記述するのを見てきた。顧客要求を分析して
システム要求に変換し、それを整理するのだが、どう整理するかに悩
む受講者の姿をたくさん見てきた。
どこに悩むのだろう?まあ我々講師陣は何度も分析してから演習題材
にしていて対象を熟知しているので、悩む点を忘れてしまっているか
もしれないというのは理由の一つだ。けれども、「経験」の少ない受
講者は、何をとっかかりにして要求を整理すれば良いかがつかめず、
途方に暮れるらしい。なので、講師からヒントを出して誘導し、それ
なりの要求仕様に持って行ってもらう。
システムの要求仕様というものは、大抵、お客様から(そして内部か
ら)の要求を分析し、システムの振舞いへの要求に変換し、それらを
グルーピングしてより少数の塊にして構造化し、全体を把握しやすい
ようにする。その構造化された要求仕様をを基に、システムのアーキ
テクチャを決める。グルーピングされた塊は、システムコンポーネン
トという今度は設計上の塊の候補として考えることができる。
しかし、前述の研修ではそのグルーピングがうまく行かない。「経験」
があれば進めていけるのかもしれない。ではその「経験」とは何なの
か?
通常の開発者は、以前に手がけたのと似たようなシステムを開発する
時、要求仕様は以前と似たようなグルーピングをするのではなかろう
か?
「似たようなシステム開発では似たようなグルーピング」。こういう
ことがあるので、開発者は経験が重視される。だが、それが個人の経
験のままであったら、知識は暗黙値であり、他の人が利用できない。
こうした知識は、何とか形式知にして、他の人でも再利用できるよう
になって欲しいと思う。
そういう形式知の形が一つある。フィーチャモデルと言う。
プロダクトライン開発*1 では、システムの対象領域(ドメイン)の
特徴をフィーチャ*2 という単位で表わし、それを粒度の大きいもの
から小さいものへと詳細化した形になるように関連づけて、フィーチャ
モデルを作る。同じドメインにあってもそれを扱うシステムは複数あ
りうるので、そこには自ずとバリエーションがあり、フィーチャモデ
ルでもバリエーションがどこにどのように存在しうるのかを表現する。
フィーチャモデルの構造は要求仕様の構造の参考になる。また、シス
テムをどのような要素で構成するかというアーキテクチャを決める際
の参考にもなる。実際、前述の研修では、フィーチャモデルに基づく
アーキテクチャ設計方法を伝えている。
フィーチャモデルは何も類似システムの初回開発で作らなければなら
ないものではない。複数の類似システムを開発した後や、これまで世
代を経てきたシステムの次の世代を検討する時にも、役立てられる。
既存の要求仕様構造やアーキテクチャと各フィーチャの間の対応を取
り、今回手掛けるシステムで何が変わり何がそのままなのかを識別す
る参照モデルとして使うことができるのだ。
「車輪の再発明」。これは以前に発明されたものを知らずに苦労して
結局同じものを作り出してしまうことを表現したフレーズだが、自分
達で開発したものにも当てはまると思う。一度分析したものは再度分
析しないで済むようにしたい。一度作ったものは、別の機会にも再利
用できるようにしたい。それを達成しようとするのがプロダクトライ
ン開発であり、そこで作るフィーチャモデルは、ドメインを整理・理
解する手段として使えるのだ。
蛇足。要求と要件の違いは上文では区別していない。どちらも英語で
は requirements なので、単に要求としてある。
*1: 類似するシステムの間の共通性と差異を捉えて整理し、共通なこ
とはなるべく一度だけ扱って、かつ差異は差異だけに注目して扱え
るようにして、複数システムを開発しようとする考え方。
*2: 特徴というような意味だが、ドメインを表現する概念があればそ
れは何でもフィーチャになりうる。フィーチャで構成されるフィー
チャモデルは、対象ドメインを表現したものになる。
Y's Workshop
林 好一
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◆3. SPI Japan 2025 実施報告
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2025年10月22日-24日に
“「つなぐ」
~価値創造に貢献する「シン・ソフトウェアプロセス改善」~”
をテーマに SPI Japan 2025を開催いたしました。
一般発表27発表の中から以下の方々が受賞されました。(敬称略)
■最優秀賞
タグ情報を使ってリスクエリアを可視化し、効率的にバグを検出す
るテスト手法
福西 章記(ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ株式会社)
■実行委員長賞
SPI Japan の活用方法
中村 伸裕(住友電工情報システム株式会社)
■プログラム委員長賞
大規模なLowCode開発を実践し得られたノウハウ・教訓
伊丹 淳(株式会社NTTデータグループ)
なお、発表資料は後日JASPIC Webサイトに掲載いたします。
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◆4. SPI Japan 2026 のご案内
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毎年実施しておりますSPIに関する国内有数のイベント、ソフトウェア
プロセス改善カンファレンス(SPI Japan 2026)の開催についてお知
らせいたします。
■日程:2026年10月14日(水)~16日(金)
■場所:AOSSA(アオッサ)(福井県福井市)
http://www.aossa.jp/
皆様からの改善活動の成果や失敗から得た知見などの発表やディスカッ
ションを予定しております。詳細は決定次第JASPICホームページにて
ご案内いたします。
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◆5. 会員募集
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JASPICは、現在、14社の法人会員および個人の会員によって構成され
ています。SPIの技術や活動の進め方を学びたい、議論したいという
法人会員、個人会員を募集しています。
詳しくは、次のサイトを参照してください。
■入会について
https://www.jaspic.org/organization/join_us/
■会員と運営体制
https://www.jaspic.org/organization/members/
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◆6. コラム執筆者募集
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当メルマガのコラムを執筆していただける方、大募集します!
~SPI活動を通じて感じたこと、気づいたことをみなさんと共有
してみませんか?~
執筆希望の方は下記の執筆要領をご確認の上【タイトル】【本文】
【氏名】を以下の宛先まで送付ください。
※内容については必要に応じて体裁調整などの修正を行う場合が
ありますことをご了承ください。
◆執筆要領
・1400文字前後(1行あたり全角31文字×45行程度)を目安
・フォーマットは自由(wordやテキスト、メール本文でOK)
・著作権上の問題をクリアし、他ブログやサイトなどに掲載
されていないもの
・氏名の掲載がNGまたは抵抗のある方はペンネームでも可能
◆宛先
PR-infoアットjaspic.org
執筆に関するご質問やご意見などについてもお寄せください。
皆様の活発な投稿をお待ちしております!
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◆編集後記
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メルマガ編集担当のA.Kです。
SPI Japan 2025に参加いただいた皆様、ありがとうございました。今
年は現地開催のみでしたが、会場には大変多くの方に参加いただき、
晴れの国岡山らしく活気に満ち溢れたカンファレンスになりました。
さて、岡山といえば「ママカリ」が有名です。ママカリとは岡山を代
表する魚のことで、会場名にも"ママカリ"と付いていました。関東で
は「さっぱ」と呼ばれる小魚のことだそうで、『ママ(ご飯)をカリ(借
り)に行くほど美味しい』ということでママカリと呼ばれるようになっ
たという説があるようです。他にも、脂が乗る旬の時期が秋の稲刈り
の時期にあたることから『ママ(稲)を刈る』ということでママカリに
なったという説もあるとか。ママカリは酢漬けのイメージが強かった
のですが、岡山名物祭ずしの具に乗っていたり、焼きママカリがあっ
たりと色々な食べ方があることを岡山に行って知りました。この10月
がちょうど旬だったようで、美味しいママカリをいただくことができ
ました。他にも岡山には美味しいものがたくさんあって、連日ついつ
い食べ過ぎてしまいました。来年のSPI Japanは福井開催です。福井も
美味しいものがたくさんあるので、今から楽しみです。現地でお会い
しましょう!
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JASPIC メルマガ 2025年10月号
発行:日本SPIコンソーシアム https://www.jaspic.org/
お問い合わせ先:infoAアットjaspic.org
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