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 ◆ JASPIC メルマガ 2017年6月号 ◆
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本メルマガでは、定期的に日本SPIコンソーシアム(JASPIC)主催のイ
ベント情報やJASPIC研究員によるコラム等をまとめてお伝えします。

* SPI(Software Process Improvement):ソフトウェアプロセス改善

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 ◆目次
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 1. 理事長挨拶:赤坂 幸彦
 2. これから開催するイベント
 3. イベント実施報告: SPIトワイライトフォーラム 2017年5月
 4. コラム:森田 祥男(ゴールドラットコンサルティング)
           「(TOC特集3/5)CCPMの正しい実践方法」
 5. SPI Japan 2017 のご案内

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 ◆1. 理事長挨拶
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皆様、こんにちは!理事長を仰せつかりました、赤坂です。
2001年より日本SPIコンソーシアムの活動に参加させて頂いております。

私は、所属組織で1998年からシステム開発のプロセス改善を推進する
機会に恵まれました。大規模プロジェクトの開発・管理の高度化をテ
ーマに、具体的にはベテランから若手メンバへの組織的なノウハウ継
承・育成の課題に取り組むものでした。そこで、アセスメント手法に
よる現状とあるべき姿のゴール定義、国内でまだ実績の少ないドイツ
の新しいプロジェクト管理基盤をベースに全社R&Dプロジェクトがス
タートしました。また、事業部門長にプロジェクトオーナーになって
頂き、現状に対する変化への抵抗勢力の方々へ丁寧に対応し、推進派
になってもらうことの重要性も感じました。国内や海外の先進的な取
り組み事例も大変参考になり、いろいろな知見を頂き感謝しておりま
す。組織・現場プロジェクトのアセスメントは、ソフトウェアCMMを
参考に自組織なりの改善も加え、活動を進めておりました。質問事項、
確認の成果物、権限や役割について、インプット/処理/アウトプッ
トを「プロセス定義」し、有識者の方々のワイガヤを何回も重ね、ノ
ウハウや知見を組込む貴重な体験となりました。

日本SPIコンソーシアムは、米国カーネギーメロン大学ソフトウェア
エンジニアリング研究所(CMU/SEI)のCMMIの翻訳や勉強会、会員企
業や多くの方々の講演と知識交換の場として活動しております。また、
成功するプロセス改善活動に向けて奮闘された苦労話など、繰り返し
その知見を共有する場としてさらに進化しています。

会員企業の方々でプロセス改善をテーマに事例や教訓を発表し合い、
スポンサー方々の役割などトップダウンと現場に焦点を当てたボトム
アップ活動と両輪で進めることが重要で有意義な場となっております。
プロセス改善活動を進める上での良き理解者、相談者となりとても心
強い存在です。

企業内でこの改善活動を立ち上げるのは大変な労力が必要です。外部
の方の発表や支援は、刺激的で説得力があり改善活動を進める上でス
ムーズなスタートになると感じております。

今では、日本SPIコンソーシアムの年次イベントのSPI Japanで、会員
企業以外の皆様との知見の共有の場として、認知度が広まってきたこ
とは大変、喜ばしく思います。
是非、10月開催のSPI Japan 2017(東京)にご参加いただければ幸い
です。

また海外のプロセス改善の団体との交流として、EuroAsiaSPI(European 
System, Software & Service Process Improvement & Innovation)
カンファレンスの機会も継続しています。今年は9月5日からチェコで
開催されますので、参加のご検討もお願いします。

最後に、日本SPIコンソーシアムは、注力すべき4つの柱を掲げて進め
ております。
①知識の体系化:多様な事例、知見を総合して知識を実践的に体系化
  する
②価値の訴求:プロセス改善の意義、効果を積極的に外へ発信する
③専門職としての確立:プロセス改善を推進する専門家の役割を明確
  化し、その必要性に対する理解を得る
④SPI適用領域の拡大:プロセス改善はソフトウェア開発だけでなく、
  移行、運用、保守、さらに情報システムの実現形態や利用形態の拡
  大に伴う各種サービス(例えばクラウド)など、より広い領域に適用
  可能であることを実証していく

今後とも、皆様のご支援や活動へご参加を頂き、プロセス改善活動に
関わる方々に広くお役にたてるよう活動していきたいと考えておりま
す。どうぞよろしくお願い致します。

赤坂 幸彦

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 ◆2. これから開催するイベント
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●SPIトワイライトフォーラム
  「エンジニアのトリセツ ~やりがいのある職場と育成~」
  http://www.jaspic.org/events/twilight/2017-8/

  発表者:松尾谷 徹(デバック工学研究所)
  主  催:日本SPIコンソーシアム(JASPIC)
  日  時:2017年8月7日(月) 18:30-20:30
  場  所:港勤労福祉会館(田町) 第一洋室
  http://www.city.minato.tokyo.jp/sangyousinkou/sangyo/chushokigyo/fukushi.html

●JASPIC例会(JASPIC会員限定です)
  日 時:2017年7月12日(水)
  内 容:1.合宿報告
         2.SPI Japan 2017のご案内
         3.SPI/SEPGの価値の訴求
           3-1.CMMIカンファレンス報告
            (SPI最新動向に触れよう!)
           3-2.IDEAL分科会(2016年度 優秀分科会)発表
            (SPIの成果・効果の示し方とは?)
           3-3.ECQA分科会発表
            (SPI推進者の知識・スキルについて触れよう!)
           3-4.招待講演
             東芝  艸薙 匠 様
           3-5.本日の発表内容をもとにしたグループ議論

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 ◆3. イベント実施報告:SPIトワイライトフォーラム 2017年5月
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今回のテーマは「ヨーロッパ版SPIマネージャ資格のご紹介~どんな
スキルが問われるのか?~」でした。
講演者は、JASPICのECQA分科会リーダの遠藤潔さんです。一般参加者
9名を含む、全19名の方に参加いただきました。
SPIに関する人材育成の取り組みの中では、
  - SPIを実践する上で必要なスキルセットは何だろうか?
  - 自身が保有するスキルをどのように確認し、他者に示すか?
といった悩みが聞かれますが、本発表では、ヨーロッパにおける取り
組みの中から
  - ヨーロッパ版のSPI関連スキルセット
  - スキルカードに基づく資格認定や教育の仕組み
を中心にご紹介頂きました。また、実際に資格認定の模擬試験も体験
でき、SPIのベテランすら悩んでしまう問題に、知的好奇心を刺激され
参加者一同、大いに盛り上がりました。フォーラム終了後の意見交換
会も約10名の方に参加いただき、議論&ダジャレが尽きない夜でした。

当日の概要は、次のURLから参照できます。
http://www.jaspic.org/events/twilight/2017-5/

次回は8月に、
テーマ「エンジニアのトリセツ ~やりがいのある職場と育成~」
発表者:松尾谷さん(デバック工学研究所)
を予定しておりますので、皆さん、奮ってご参加ください。

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 ◆4. コラム:「(TOC特集3/5)CCPMの正しい実践方法」
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TOC特集をテーマに全5回のコラムを掲載予定で、今回はその3回目です。

こんにちは。ゴールドラットコンサルティング 森田祥男です。
1回目は、「なぜマツダは復活できたのか」
2回目は、マツダ復活の原動力となった「TOCの基本と4つの信念」
についてご紹介しました。
■1回目:
  http://www.jaspic.org/mailmagazine/201702/
■2回目:
  http://www.jaspic.org/mailmagazine/201704/

今回は、プロジェクトに和をもたらし助け合いを加速する手法である
CCPM(Critical Chain Project Management)の正しい実践方法につ
いてご紹介します。

CCPMは納期を確実に守るための強力なプロジェクト管理ツールです。
各タスクの期間見積から余裕(サバ)を取り去ってギリギリまで短縮
し、クリティカルチェーン(CC)上のタスクから取ったサバを集めて
最後にプロジェクトバッファ(PB)としてまとめます。CCとPBの関係
は次の式で表されます。
  CC + PB = 納期までの実働日数
  CC : PB = 2 : 1(目安)
日々の進捗管理では、横軸にCCの日数を、縦軸にPBの残日数をとった
フィーバーチャートをプロットしながら、危険度を常に把握し納期に
遅れないように、皆で助け合いながらプロジェクトを進めていきます。
詳しい手順は、岸良裕司著「最短で達成する 全体最適のプロジェク
トマネジメント」をご覧下さい。

1回目にご紹介したマツダの起死回生のSKYACTIV開発は全てこのCCPM
で行われました。通常5~6年かかるエンジンやシャシーを含むパワー
トレイン開発を、会社存続という大きな危機に直面したため、2年で
やれ、更にあと半年短縮しろと言われ、それでも現場は奮起して工程
を工夫し、やり遂げることができました。このように素晴らしい成果
を挙げることが、CCPMを導入した現場では本当に良くみられる現象で
す。しかしながら、CCPMをやっても上手くいかない、却って仕事がき
つくなった、残業が増えた、チーム内がギスギスした、遅れると怒ら
れるといったように、余りうまく回っていない話を時々聞きます。
これは何故でしょうか?
実はCCPMの成功は経営層から上司までの全てのマネジメントの意識が
肝なのです。以下に上司として守るべき3つの教訓についてご説明し
ます。

1)上司は、現場メンバに対して、不確実なことにまで責任を背負わ
    せてはならない。

プロジェクトメンバは皆一生懸命に頑張っています。しかもタスクか
らサバを取ればギリギリで仕事をすることになります。それでも責任
を持って現場は頑張ります。しかし、もし不確実なことや想定外のこ
とが起こると、たとえ小規模なものでも、見積もったギリギリの期間
内ではタスクは完了できません。つまり「間に合いません」と、手を
挙げざるを得ないのです。あらかじめ計画した仕事はしっかり責任を
もってやり遂げるが、想定外のことにまで責任を背負い込む必要はな
い、それがどういう理由であろうとも、このままでは遅れてしまうと
いう現実が今目の前にある訳で、過去の原因の追求や再発防止に時間
をかけるより、どうやって今後納期に間に合わせるかを、上司含めて
メンバ皆で一生懸命に考えて乗り越えるのです。
過去ではなく未来に焦点をあてるのがCCPMの本質です。

2)上司は、現場メンバに対して、遅れたことの責任を追求してはな
    らない。

現場から遅れますと手が挙がった時に、上司として決して言ってはな
らない一言があります。「何故遅れたのか!」「何やってたんだ!」
と叱責することです。そもそも現場メンバはギリギリの期間でベスト
エフォートで見積もっています。少しでも問題があれば遅れるのは当
たり前です。それを従来の考え方である、「期間見積=現場のコミッ
トメント」という前提で捉えてはいけません。コミットメントと捉え
ると現場は責任を背負い込むようになり、期間見積に含まれるサバが
再び増えてしまい、結果的にCCPMが崩壊していきます。

3)上司は、現場メンバから問題が挙がったら、すぐに本気で助けな
    ければならない。

現場メンバから手が挙がったら、上はすぐに助けなければなりません。
特にPBが大きく侵食されるような遅れは最優先で回復させなければな
りません。対応が遅れれば遅れるほど、納期に対する危険度が更に増
す緊急事態であるという認識がまず必要です。
実は、助けるということを怠っている上司、助けるという本当の意味
を理解していない上司が余りにも多いのが現実です。
現場から手が挙がると、何で遅れたんだ? あれやったか? これやっ
たか? 何故やってないんだ? という叱責だけでなく、ここは彼に聞
くといいかも、ここも考えておくといいよ、次回までに確認しておく
ように、といった会話が現場で交わされていませんか?上司も良かれ
と思ってアドバイスをするのでしょうが、全く現場の当人にとっては
助けになっていません。問題を上げると、却って宿題が増えるのです。
これが続くと、誰も問題を上に挙げようとしなくなり、ギリギリまで
問題を抱え込む、しんどい仕事の仕方になってしまいます。結果的に
間に合わなくなってから問題が上がる。しかし、その時にはもう手を
打っても間に合わない状況になっている。こうしてCCPMの仕組みが崩
壊していきます。本当の助けとは、上司自らが動くことです。

・現場メンバを今やるべきことに集中させるため、作業の優先度をし
  っかり決めること。
・他の余裕のあるタスクやプロジェクトから有能なメンバを支援投入
  すること。
・更なる検討や外部との調整など必要な作業は、全て上司自らが引き
  取ること。
  
また上司自身の力と責任の範囲では解決に時間がかかると思われる問
題は、より上層部に助けてもらうため、すぐにエスカレーションする
ことも重要です。当然上層部も皆がCCPMの本質を理解しておく必要が
あります。せっかく早く問題が現場から挙がっても、上司自身の責任
感やメンツ等さまざまな要因で、上層部へのエスカレーションが出来
ず、現場を助けるのが遅れてしまうのは本当に時間がもったいないの
です。上司といえども自分だけで責任を背負い込まずに、社長を含め
たあらゆるリソースをフル活用して問題を解決し、早くプロジェクト
を完成させることが、実は会社にとって全体最適であるという理解が
必要です。

ここまでの説明でおわかりと思いますが、CCPMは現場のためのツール
ではありません。感度良く現場から問題を挙げてもらい、納期を遅ら
せるコアの問題に早く手を打って、プロジェクトを成功させたいと心
から願うマネジメントのためのツールなのです。
CCPMはマネジメントがしっかり理解した上で使いこなすことで、プロ
ジェクトに和をもたらし助け合いを加速する、驚くほど強力なツール
となるのです。

皆さんの会社には、現場の心配ばかりするこんな上司はいませんか?
CCPMガスを噴射すれば、悩み解消間違い無しです。下記のビデオを楽
しんで下さい。
しんぱい虫のものがたり
  https://www.youtube.com/watch?v=ZPleZ-yIwKg

今回のコラムは以上です。8月はSPI Japan特集のためお休みです。
次回は10月となります。「TOC流要件定義」についてご紹介する予定
です。ご期待下さい。

感想など何でも結構ですので、お気軽に下記までご連絡下さい。

森田祥男(ゴールドラットコンサルティング)
yoshio.moritaアットgoldrattgroup.com
(宛先の「アット」を「@」に置き換えてご連絡下さい)

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 ◆5. SPI Japan 2017 のご案内
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毎年実施しておりますSPIに関する国内有数のイベント、ソフトウェア
プロセス改善カンファレンス(SPI Japan 2017)の開催日と開催場所
は以下の通りです。

  ■日程:2017年10月11日(水)~13日(金)
  ■場所:タワーホール船堀(東京都江戸川区)
          http://www.towerhall.jp/

皆様からの改善活動の成果や失敗から得た知見などの発表やディス
カッションを予定しております。7月末から参加者の募集を開始いたし
ます。詳しくは以下のWebページでお知らせします。
  http://www.jaspic.org/events/sj/spi_japan_2017/

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 ◆編集後記
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メルマガ編集担当のA.Kです。
早いものでもう夏がすぐそこに迫っていますね。
夏と言えば、海、山とアウトドアのレジャーも楽しみな季節です。
私は先日友人の熱心な誘いもあり、南伊豆で生涯2度目のスタンドア
ップサーフィン(通称SUP)にチャレンジしました。SUPはサーフボード
の上に立ち、パドルを漕いで海を進むスタイルのサーフィンです。
最初はボードの上に立つのもやっとで度々海に落ちてしまいましたが、
パドルを漕ぐスタイルということもあり、慣れてくると少し遠くへ簡
単に行けます。今回は海岸から少し離れた海上の洞窟内をツアーで探
検したのですが、晴天にも恵まれ洞窟の中に太陽の光が差すとまさに
光り輝く青の洞窟でした。日本とは思えない神秘的な景色にとても癒
されました。澄んだ海や陸からはアクセスできないところにも行ける
ことは新たな発見で、次回は宮島(広島)の厳島神社の海の鳥居をSUP
でくぐろうと誘われています。翌日以降は全身が激しい筋肉痛でつら
いのですが、あの絶景とは比べられず、海に行くことが楽しみになっ
てしまいそうです。
今年も暑い夏になりそうですが、海に山に夏の楽しみ方を見つけるの
も猛暑を乗り切るコツかもしれませんね。
皆様も素敵な夏をお過ごしください。

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 JASPIC メルマガ 2017年6月号
 発行:日本SPIコンソーシアム http://www.jaspic.org/
 お問い合わせ先:infoAアットjaspic.org
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