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 ◆ JASPIC メルマガ 2017年4月号 ◆
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本メルマガでは、定期的に日本SPIコンソーシアム(JASPIC)主催のイ
ベント情報やJASPIC研究員によるコラム等をまとめてお伝えします。

* SPI(Software Process Improvement):ソフトウェアプロセス改善

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 ◆目次
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 1. これから開催するイベント
 2. コラム:森田 祥男(ゴールドラットコンサルティング)
           「(TOC特集2/5)TOCの基本と4つの信念」
 3. 分科会の紹介:要件定義プロセス分科会
 4. SPI Japan 2017 発表募集のご案内

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 ◆1. これから開催するイベント
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●SPIトワイライトフォーラム
  「ヨーロッパ版SPIマネージャ資格のご紹介
                            ~どんなスキルが問われるのか?~」
  発表者:遠藤 潔(JASPIC ECQA分科会)
  主  催:日本SPIコンソーシアム(JASPIC)
  日  時:2017年5月29日(月) 18:30~20:30
  場  所:港勤労福祉会館(田町) 第一洋室

●JASPIC合宿(JASPIC会員限定です)
  日  時:2017年6月2日(金)13:00 ~ 6月3日(土)15:00
  場  所:静岡県熱海市
  内  容:1. 議論&納得セッション
        :2. 講演
           (IPA/SEC 山下博之氏、JASPIC 赤坂理事長、乗松特別会員)
          など

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 ◆2. コラム:「(TOC特集2/5)TOCの基本と4つの信念」
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TOC特集をテーマに全5回のコラムを掲載予定で、今回はその2回目です。

こんにちは。ゴールドラットコンサルティング 森田祥男です。
1回目は、「なぜマツダは復活できたのか」を紹介させて頂きました。
<http://www.jaspic.org/mailmagazine/201702/>
今回は、マツダ復活の原動力となったTOCの基本と4つの信念について
ご紹介します。

TOCとはTheory of Constraints(制約理論)のことで、エリヤフ・ゴ
ールドラット博士によって開発された理論です。システムが個々のプ
ロセスの繋がりで構成され、それぞれのプロセスの能力にバラツキが
あるのだとすれば、TOC理論がピッタリ当てはまります。
簡単に、5つの直列する工程から成る工場の例で説明します。各工程
の1日あたりの能力は下記に示した数字の通りとします。
原材料購入 → 20 → 15 → 10 → 12 → 16 → 製品出荷

質問1)この工場の製品の出荷数は1日いくつでしょうか?
質問2)各工程が目一杯頑張ったら、工場はどうなりますか?
質問3)では、この混乱を抑えるために、どうすればよいでしょうか?

答えは簡単ですね。1)製品の出荷数は1日10個、2)15と10の工程の前
に仕掛の山が出来る。3)10の工程の能力を上げる。
つまりこの工場の制約は真ん中の10の工程であり、工場が製品を出荷
する速度は、制約の速度以上には上がらないということです。

質問4)制約の能力が10の場合、工場が一番儲かるには、どうすれば
よいでしょうか?
答えは、各工程が10だけ仕事をするということです。原材料も10だけ
購入し、各工程が10だけ仕事をするのが、最もムダ無く流れがよい状
態となります。
では、あなたが隣の15の工程のマネジメントだとしましょう。10だけ
仕事をすればよいということは、5の余力が生まれることになります。
この余力を使って、制約の10の工程を少しでも助けてあげることが出
来れば、制約の能力が上がり製品の出荷数は10から11、12と増やすこ
とが出来ます。制約を助けることは工場全体のアウトプットを増やす、
つまり儲かることに直結するのです。助けてもらった制約工程の人は、
助けてくれた人に感謝すると思います。その後、別の製品を流した時
に、制約がもし入れ替わったとしたら、前に助けてもらった工程は、
制約となった工程を助けますよね。このようにして、制約がどこかわ
かるだけで、非制約の働き方が変わり、助け合いが加速し、社内に調
和が生まれるのです。
個々の工程がそれぞれ自分のところで目標を決めて頑張っても、制約
以上には全体のアウトプットは上がりません。これを部分最適といい
ます。いくら頑張っても、努力が成果に繋がらないのです。それより
も、制約を見つけて皆で助けることで、全体のアウトプットを上げる
ことが出来る、これが全体最適の考え方なのです。

しかし、ちょっと待って下さい。こんな当たり前のことが、何故実際
には簡単に出来ないのでしょうか?例えばあなたが20の工程のマネジ
メントだとします。制約の能力が10だとわかっていれば、自分の部署
の能力は20あるけれども、10だけ仕事をするのが一番全体最適で会社
が儲かるということになります。しかし、ということは、1日半分だ
け仕事をしなさい、後の半分は仕事をせずに遊んでいなさいと、マネ
ジメントは現場に指示しなければなりません。どうですか?出来ます
か?もし会社の社長が来て、仕事をしていない職場を見たら、何を遊
んでいるのか!とマネジメントは叱責を受けることになりませんか?
全体最適を実行し成果を出すためには、会社全体で全体最適に取り組
み、社長以下全マネジメントの考え方を変える必要があります。
つまり個々の現場だけでTOCをやっても限界があるのです。

ソフトウェア開発の場合は、大抵の場合、経験豊富な優秀なエンジニ
アやプレイングマネージャーが制約となります。成果物の方針を決め、
計画を立て、成果物をレビューし、担当者の相談に乗り、トラブル対
応もし、関係部署からの問合せにも対応し、さまざまな本社活動にも
駆り出されたり、出張手続きをしたりなど、多くの業務を抱えるバッ
ドマルチタスク状態になっています。
このような制約のことを、希少リソースと呼びます。簡単に人を増や
せないからこそ制約になっているのです。こうした希少リソースを、
彼らしか出来ない重要な仕事に、1日どれくらいの割合で仕事をして
もらっているか、本人に聞いてみると興味深いことがわかります。
50%を超える答えを私は聞いたことがありません。希少リソースの速
度がプロジェクト全体の速度を決めているのだとすれば、もし1日8時
間、希少リソースの彼しか出来ない重要な仕事にだけ集中してもらえ
るよう、周りが助けることが出来たら、プロジェクトの速度は今より
も相当上がる筈です。
このように希少リソースに本来やるべき仕事に集中してもらうことで、
儲かる会社に変えていくのがTOCの基本的な考え方です。

TOCの根底には思考プロセスという確固とした論理体系があり、科学
者のように考えるための4つの信念で支えられています。皆さんの会
社での問題解決にも役立ちますので、ご紹介します。
1)人はもともと善良である。
  人のせいにしても問題は解決しない。その人の思い込みのせいであ
  ると考えて問題解決に取り組むという信念。
2) ものごとはそもそもシンプルである。
  ものごとを複雑と考えると解決策が見え難くなってしまう。一見複
  雑に見えることも、因果関係のロジックを明確にすることで、シン
  プルに解決できるという信念。
3) あらゆる対立は解消できる。
  対立が起こった時に、強要や諦めや妥協をするのではなく、Win-Win
  の解決策は必ず見い出せるという信念。
4) わかっているとは決して言わない。
  もう自分は出来た、わかったと思った瞬間に成長はストップする。
  目標を思いっきり高く設定し、まだまだだなと思って改善に取り組
  み続けるという信念。

今回のコラムは以上です。次回はプロジェクト管理手法である「CCPM
の正しい実践方法」についてご紹介する予定です。ご期待下さい。
感想など何でも結構ですので、お気軽に下記までご連絡下さい。

森田祥男(ゴールドラットコンサルティング)
yoshio.moritaアットgoldrattgroup.com
(宛先の「アット」を「@」に置き換えてご連絡下さい)

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 ◆3. 分科会の紹介:要件定義プロセス分科会
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JASPICでは、あるテーマに対して興味を持つメンバが集まり、一年間
にわたって議論する場として14の分科会が活動しています。その中か
ら今回は要件定義プロセス分科会の紹介をさせていただきます。

●要件定義プロセス分科会
  要件定義プロセス分科会(略称:RD分科会)は、2011年4月より活動
を続けている、現在6名の研究員が在籍している分科会です。

【活動の目的】
  要件定義・仕様書に起因する不具合に困っている方や、抜け漏れや
曖昧さをなくすための方法を調査研究したい人が、各自の課題や知見
を持ち寄って議論を重ねることで、開発現場の作成する要件定義・仕
様書の質を上げるために貢献できるようになることを目的としていま
す。

【過去の研究】
  2011年4月から2014年11月までは、Tom Gilb氏の著書"Competitive 
Engineering"の輪読を行い、内容を要約する活動を実施しました。
その後は、同書に紹介されている仕様記述言語"Planguage"やその他
の仕様表現の技法について、仕様書事例を作成しながら理解を深める
活動をしました。

【現在の研究】
  分科会としての「あるべき仕様書の姿」の見解をまとめることを第
一の目標としています。各種文献・規格書などから、仕様書に対する
要求事項をピックアップして、類似内容の統合や優先順位などを検討
した上で、必要事項リストを作成します。
  次に「あるべき仕様書の姿(必要事項)」に対して、各種の手法・
方法論がどのように効果を発揮するのかを整理することが第二の目標
です。現在、さまざまな要求工学的手法や仕様表現方法が提案され、
開発現場で実践されていますが、その中から分科会として理解を深め
たいと判断した手法をピックアップして簡単な解説を作成するととも
に、その手法が仕様書必要事項のどの項目を満たすために役立つのか
を、紐付けていきます。

  また、要求工学を専門とする研究者と交流して、分科会活動へのア
ドバイスや、要求工学分野のトレンドを解説していただく場を作るこ
とも、企画しています。

【最後に】
  開発のスコープを確定する要求定義・仕様書のありようは、開発の
成否にきわめて大きな影響を与えます。そのためにSPIの立場で何が
できるのか、一緒に考えていただけるJASPIC会員は、是非メンバとし
てのご参加をご検討ください。

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 ◆4. SPI Japan 2017 発表募集のご案内
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毎年実施しておりますSPIに関する国内有数のイベント、ソフトウェア
プロセス改善カンファレンス(SPI Japan 2017)本会議の発表募集を
4月21日(金)より開始しました!

  ■日程:2017年10月11日(水)~13日(金)
  ■場所:タワーホール船堀(東京都江戸川区)
          http://www.towerhall.jp/

今年のテーマは、

「楽(かな)でる!」 ~共に楽しみ、共に創る!~

です。

改善活動では、推進者たちだけが一生懸命に改善を進めても、周囲の
関係者の理解がなければその活動は長続きしません。
改善を進めるためには、関係者全員が、“必要性を感じ”、“目的を
理解し”、“互いが満足する”というWin-Winの関係になって初めて
真の意味で活動が進むと信じています。
開発者側と顧客との関係、さらにはソフトウェア業界を取り巻く産学
の協調関係などにも同じことが言えるでしょう。
改善に携わる全員が同じ目標に向かって互いにベクトルを合わせ、
「楽しく」業務を進めていこうではありませんか。

当カンファレンスでは、皆様の発表を心よりお待ちしております。
締め切りは5月29日(月)を予定しています。
詳しくは、SPI Japan 2017のホームページをご覧ください。 

http://www.jaspic.org/events/sj/spi_japan_2017/

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 ◆編集後記
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メルマガ編集担当のA.Kです。 
もうすぐゴールデンウィークですね。今年は最長9連休という人もいる
のではないでしょうか。私はこの時期によく味覚狩りに行くのですが、
おすすめはサクランボ狩り。シーズンは6月ですが、ハウスものであれ
ば5月の連休からオープンしている農園があります。高価なサクランボ
は普段食べる機会が少ないと思いますが、狩りだと2,000円前後で食べ
放題!今までの記録は85個、小さいので意外にパクパクと食べられる
んです。家族や友達と一緒に少し遠出してみるのはいかがでしょうか。
では、素敵な連休をお過ごしください。

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 JASPIC メルマガ 2017年4月号
 発行:日本SPIコンソーシアム http://www.jaspic.org/
 お問い合わせ先:infoAアットjaspic.org
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