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 ◆ JASPIC メルマガ 2013年10月号 ◆
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本メルマガでは、定期的に日本SPIコンソーシアム(JASPIC)主催のイ
ベント情報やJASPIC研究員によるコラム等をまとめてお伝えします。

* SPI(Software Process Improvement):ソフトウェアプロセス改善

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 ◆目次
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 1. これから開催するイベント
 2. 分科会の紹介:SPC分科会
 3. コラム:池田 浩明(インテック)
          「技術伝承とプロセス標準化」
 4. コラム:林 好一(SRA)
     「Early Adaptors に納得してもらう」
 5. SPI Japan 2013 実施報告
 6. 会員募集

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 ◆1. これから開催するイベント
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今月はJASPIC主催の一般向けのイベントはございません。

<ご参考>
●JASPIC例会(JASPIC研究員限定です)
  日  時:2013年11月15日(金)
  内  容:1.会員企業の事例発表(ジャステック様、ソニー様)
          2. SPI Japan 2013 受賞者による講演
             最優秀賞受賞者
             派生開発手法導入に見る現場起点のプロセス組織
             展開事例
             オムロン株式会社 赤松康至様
          3.カンファレンス実施/参加報告
            ・SPI Japan 2013
            ・SEPG North America 2013
            ・SQiPシンポジウム
            ・その他

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 ◆2. 分科会の紹介
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JASPICでは、あるテーマに対して興味を持つメンバが集まり、一年間
にわたって議論する場として12の分科会が活動しています。その中か
ら今回は、SPC分科会をご紹介します。

●SPC分科会(Statistical Process Control)

SPC分科会では、ソフトウェアに関係するプロセスをどう把握して
どのように制御すればよいかを学び、その活用をめざしています。

そのために必要となる以下の知識と応用を身につけるために、輪読を
中心に要約したり、各社事例を紹介しあうことで、分科会メンバの気
づきを互いに共有しています。

 1.何がプロセスデータになるか
 2.プロセスデータを読み解くためにはどのように扱えばよいか
   -さまざまな統計手法と注意点
 3.プロセスデータを分析するときに直面する課題と対策
   -手法の選び方・使い方の実例を通して
 4.プロセスデータを分析するツールの使い方
   -フリーソフトであるR言語を利用しています

http://www.okada.jp.org/RWiki/?R%20%A4%CE%A5%A4%A5%F3%A5%B9%A5%C8%A1%BC%A5%EB

【過去2年間の活動テーマ】
  2011-12年
   「Applied Statistics for SOFTWARE MANAGERS by Maxwell」抄訳
    とRでの確認
    →IBM 69PJの実データによる開発~マイグレーションに至る分析
      の過程
    →トワイライトフォーラムでの紹介
  2012-13年
   「統計的方法入門 鐵健司著」要約と紹介
   「カテゴリカルデータ解析 藤井良宜著」要約と紹介
    トピック:各社事例、グラフィカルモデリング紹介、管理図の考
    え方

【今年度の活動】
   2013年度は、以下の両輪で進めようとしています。
   ・「基本的な統計手法の振り返り」と「新しい手法の試み」
   ・「輪読による基本知識の習得」と「実際の適用事例紹介」

【最後に】
  統計手法は論理的な根拠に基づいた考え方が根底にあり、有効活用
  できるかどうかは使い方次第です。
  ハードウェアや量産の世界では必須とされているのに対し、ソフト
  ウェアではまだ発展途上だと思います。
  ビッグデータというキーワードでデータアナリストの話題が盛んに
  取りあげられていますが、プロセスはもちろんシステム運用やアプ
  リケーションレイヤでの有用性を多くの有識者が主張しています。

  統計手法は過去の先人が議論による淘汰を経て積み上げてきた知識
  の集大成です。数字という両刃の剣をうまく使いこなしてその有効
  性を実感する人が増えていってほしいと思っています。

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 ◆3. コラム:「技術伝承とプロセス標準化」
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伊勢神宮の式年遷宮が10月初めの遷御の儀で幕を下ろしました。

伊勢神宮の遷宮は、20年ごとに社殿を新しく造り替えます。なぜ20
年ごとに造り替えるのかというと定説はなく、いつまでも新しくして
おくためなど、いくつかの説があるようですが、建替え技術の伝承の
ためという説が私としてはもっともしっくりと理解できます。

昔は今よりも寿命が短いので、建替えを行う大工は、10~20歳代で
見習い、30~40歳代で棟梁になり、50歳以上で現役から引退したよ
うです。そのため20年に一度であれば、現役で2度、トレーニーと
トレーナーの立場で遷宮を経験できるので建替え技術の伝承には好都
合だったということです。

我々のIT業界では、今後多くの熟練技術者が引退していきます。一
方、若い技術者が以前ほど多くは入りませんので人財ピラミッドの歪
みが出始めています。これまで先輩から後輩へとごく自然に受け継が
れていた技術や教訓、よき伝統などが上手く伝わらず、放っておくと
どこかで途切れてしまうことが心配です。

伊勢神宮の遷宮のようにはいかないかもしれませんが、組織全体で、
意識的に技術伝承する仕組みを考えないといけないのでしょう。

長年、プロセス標準化に関わっていますが、概ね10数年ごとに全社
の標準プロセスを大幅に見直してきました。ただ、新しい技術に標準
プロセスをどう対応させるかに注意が向き過ぎて自社技術の伝承とい
うことはさほど意識していなかったかもしれません。そのなかで抜け
落ちたものもおそらくあるでしょう。

今後は、例えば10年ごとにベテラン、中堅、若手が一緒になって新
しい標準を創り上げるような仕組みを作り、ベテランは蓄えてきた技
術やノウハウを体系化し、それを中堅や若手が受け取り、最新の技術
と上手くミックスさせながら新たな標準として、また標準作りを通じ
て技術を受け継いでいく、そんなことができるとよいな、とぼんやり
とですが考えています。

池田 浩明(インテック)

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 ◆4. コラム:「Early Adaptors に納得してもらう」
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8月に、ソフトウェアプロダクトライン(SPL)国際会議に参加しまし
た。その中のパネル討論で聞いて肯いたことがあったので紹介します。

「組織内で、従来のやり方で失敗するよりも、新しいやり方で失敗す
る方が、非難される。SPL の導入を託すのは、新しいやり方で失敗す
ることを恐れないマネジャが良い。」

別に失敗を歓迎する訳ではなく、未知のプロセスに尻込みせずに対応
する気概を持った人にやってもらうべきだろうということです。これ
は SPL に限った話ではなく、プロセス改善もより良いプロセスに
*変えて*いくことなので、同じことですね。

また同じパネル討論で、筆者は次のようなことを尋ねました。

「導入に当事者全員が賛同することはない。鍵は Early Adaptors を
見つけることだと思うが、どのように見つけるのか?」

答え:「瞳に炎を宿した者がそれだ。」

仕事のやり方をよくしたいという点に関しては、殆どの人がそう思っ
ていると思います。ただ、なるべく従来のやり方を変えたくないとも
思っていて、それを率先して変えていく人が Innovators と Early
Adaptors です。前者は新たに知ったことは何でも試してみる人なの
で、とりあえず置いておきます。後者は、自分の仕事が改善されるな
ら、従来のやり方を捨て新しいやり方を採用することを躊躇しない人
です。この人達に納得してもらい、まず理解・試用してもらって、他
の Majority の人がが採用に至る先鞭をつけてもらうのが良いと考え
て、上の質問をしました。

新しいやり方で成功する人は、そのやり方に納得して進めます。そし
て、一旦納得したら、うまくできるはずだという確固たる「想い」を
持ちます。この「想い」が、瞳の炎、つまりは情熱となって、顕われ
るのではないでしょうか。

なお、Early Adaptors が採用しても、なお普及には溝(キャズム)が
あるという説もありますが、それはまた稿を改めて…

※ここでの用語は、社会学者 E.M. Rogers の著書から採られたもので
す。詳しくは「ロジャーズ アーリー・アダプター」などで検索してみ
てください。

林 好一(SRA)

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 ◆5. SPI Japan 2013 実施報告
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2013年10月16日-18日で“「共感」・・・ 心が動くとき、行動
は変わる! ~今こそ「カイゼン」の一歩を踏み出そう!~”を
テーマに SPI Japan 2013を開催いたしました。
一般発表24発表の中から以下の方々が受賞されました。

最優秀賞
  派生開発手法導入に見る現場起点のプロセス組織展開事例
        オムロン株式会社 赤松康至様

実行委員長賞
  SaPID実践事例より~改善推進役がやるべきこと/やってはいけない
  こと現場が自らの一歩を踏み出すために
        株式会社HBA 安達賢二様

プログラム委員長賞
  アジャイル開発における品質保証部門によるシステムテストの
  アプローチ アジャイルチームに寄り添う品質保証部門の考え方
        ソニー株式会社 永田敦様

なお、発表資料は11月末を目途にJASPIC Webサイトに掲載いたします。

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 ◆6. 会員募集
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JASPICは、現在、19社によって構成されています。SPIの技術や活動の
進め方を学びたい、議論したいという法人会員を募集しています。
詳しくは、次のサイトを参照してください。

  ■入会について
    http://www.jaspic.org/modules/profile/index.php?content_id=5
  ■会員企業と運営体制
    http://www.jaspic.org/modules/profile/index.php?content_id=10

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 ◆編集後記
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メルマガ編集担当のA.Kです。
今月はSPI Japan 2013が開催されました!
ご来場いただいた皆様、お忙しい中ご足労いただき誠にありがとうご
ざいました。初日には台風に見舞われ、チュートリアルにご参加の皆
様には大変ご心配をおかけいたしましたが、30分開始を遅らせ、皆様
のご協力の中、無事終了することができました。
また、今回、残念ながら参加できなかった皆様、来年は静岡県沼津市
にて開催いたします。是非ご検討のほど、よろしくお願いいたします!

さて、朝晩肌寒くなってきましたね。この時期から心配になってくる
のが結露です。窓枠はもちろんのこと壁際においたクローゼットの
後ろにも結露し、気がついた時には壁の中がボロボロになっている
ことがあるそうです。特に部屋と部屋の間にある壁に注意とのこと。
風邪対策だけでなく結露対策のためにも、こまめに換気をしたいとこ
ろですね。寒さが苦手な方は、温かいショウガくず湯がお勧めです。

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 JASPIC メルマガ 2013年10月号
 発行:日本SPIコンソーシアム http://www.jaspic.org/
 お問い合わせ先:infoAアットjaspic.org
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