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 ◆ JASPIC メルマガ 2022年10月号 ◆
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本メルマガでは、定期的に日本SPIコンソーシアム(JASPIC)主催のイ
ベント情報やJASPIC関係者によるコラム等をまとめてお伝えします。

* SPI(Software Process Improvement):ソフトウェアプロセス改善

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 ◆目次
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 1. これから開催するイベント
 2. 分科会の紹介:人材育成分科会
 3. コラム:磯野 聖(フリーランス(JASPIC分科会会員))
           「正しい(?)開発プロセス」 
 4. SPI Japan 2022 実施報告
 5. SPI Japan 2023 のご案内
 6. 会員募集

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 ◆1. これから開催するイベント
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●JASPIC例会(JASPIC会員限定です)
  日 時:2022年11月8日(火)
  内 容:1. 講演(SQiPシンポジウム2022:受賞テーマ2件ご発表)
         2. ショートプレゼン
         3. ライトニングトーク
         4. SPI Japan 2022報告
         5. カンファレンス報告(Euro SPI 他)
         6. 事例紹介ベースのディスカッション
            ・NECソリューションイノベータ
            ・ソニーセミコンダクタソリューションズ

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 ◆2. 分科会の紹介:人材育成分科会
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【活動の目的】
 人材育成分科会では、ソフトウェアプロセス改善のための人材育成
を各種の課題、技法、教育体系、知識体系等の観点で検討を加え、得
られた知見をもとに各社の教育プロセス改善に役立つ成果物作成を目
指して2004年から活動しています。

【分科会メンバ】
 各社の人材育成に関わってきた、関わっている研究員や、現場の人
を幸せにしたい研究員9名で活動しています。本分科会で開発したノ
ウハウや考え方を持ち帰り日々勤しんで、そしてまた、対話を続けな
がら新たな視点で研究をしています。

【活動の内容】
 2004年のPeople CMM実践的理解から始め、人材育成ガイドライン、
OJTガイドラインを開発しています。2010年から改善活動を推進する
ために必要な人間系スキルに着目しました。ここから、必要な人間系
スキルと解決できる課題をマトリクス化した人材育成カルテとカルテ
活用ガイドを開発するきっかけを得ています。近年は、SPI推進課題分
科会、SPI事例研究分科会共同で、ゲーミフィケーション理論を活用し
た“やる気にさせる”SPI人材育成ワークショップを開発し、SPI Japan
で提供しました。その間にも、フラット型組織論であるティール組織
を調査し、成熟した組織とそこに活動する人材の育成についても検討
してきました。
最近では、組織内の人と人にある摩擦は、感情のやりとりであること
に着目し、感情を主役とした即興劇「ソシオドラマ※」を活用した
ワークショップを開発しました。ソシオドラマ・ワークショップの中
で起こる出来事はまさに組織の縮図であり、私たちが日々モヤモヤす
る理由があります。そして、そのモヤモヤを感じて行動できる人材こ
そ、エンパシー(知的作業として身につける、正確に想像する能力)
が高く、コンピテンシー(業務や役割において高いパフォーマンスを
発揮できる人に共通する行動特性)のあるSPI人材だと気づき始めま
した。
 人材育成分科会では、これからも現場を幸せにできる人材の育成を
模索していきます。

※ソシオドラマとは
(https://kotobank.jp/word/%E3%82%BD%E3%82%B7%E3%82%AA%E3%83%89%E3%83%A9%E3%83%9E-90030)
・人間の「間」に生まれる感情(問題)を主役にする即興劇
・個人の中の葛藤と変化に着目する
・ネガティブを扱う(クレーム対応、DV介入など)
・ポジティブを扱う(自己開示など)

【最後に】
  人材育成分科会では、多様な経験や考えをもつ方々をお待ちしてい
ます。多様な視点を持ち寄り、これからの人材育成を一緒に考えてみ
ませんか?

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 ◆3. コラム:「正しい(?)開発プロセス」
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みなさん、こんにちは、磯野です。JASPICではアジャイル分科会で活
動しています。

私は、サラリーマン人生の前半でソフトウェア開発、特に通信系のア
プリケーション開発を行っていました。その後、品質やプロセスに携
わるようになり、終盤ではアジャイルにも足を突っ込んだりしてきま
した。

開発技術者の頃は、正直、開発プロセスとか全然気にしていませんで
した。その後、開発の現場を離れてからは、誰も教えてくれない(苦
笑)ので、自分で色々と調べ、考えてきました。その中には開発プロ
セスも含まれていました。当時(彼此20年くらい前です)、SWEBOKな
どソフトウェア工学を学ぶ機会があり、開発プロセスモデル(SQuBOK
ではプロセスモデル)であるウォータフォールやスパイラル、インク
リメンタルやプロトタイピングなど、それぞれの特徴や違いを知りま
した。また、ライフサイクルに関する国際規格や、SPICE、CMMといっ
たプロセスアセスメントについても、情報を収集しました。そして、
JASPICでは、プロセス改善を学び、組織プロセスとプロジェクトプロ
セスの関係などを知りました。その後、会社の意向を受けて標準を定
めました。新たに知った、開発プロセスモデルや、開発プロセスに関
する国際規格や、プロセス定義・改善のノウハウなど、てんこ盛りで
す。(笑)自信を持って開発現場に提示しましたが、あちらこちらで
ブーイングの嵐!(苦笑)

ところで、正しい開発プロセスとはなんなのでしょう?
昨今、国内でもアジャイル開発を取り入れるプロジェクトが増えてい
ますが、こんな声を聞いたことありませんか?
「お客さんから頻繁に仕様変更が入るからアジャイル開発にしよう。
スクラムでやれば大丈夫だろう。」
一見、真っ当なアプローチにも見えますが、「スクラム」だけではシ
ステムを作り上げることは出来ないですよね。にも関わらず、こう
いった誤解が散見されるのはなぜなのでしょう。そこには数多くの要
因がありますが、大きく分けると次の二つになると考えています。

・原理原則を知らながい故の誤解
・目的を把握していないが故の誤解

自身をふりかえると、開発現場にいた頃の自分は、この二つの誤解を
そのままに、日々開発を行なっていたように思えます。
開発プロセスに関する原理原則は、主なものだけでも以下のようなも
のがあります。
・開発プロセスモデルの種類と特徴
  - ウォータフォールモデル
  - 反復型開発(インクリメンタルモデル、イテレーティブ型開発)
  - プロトタイピング
  - スパライラルモデル
  - アジャイル開発
・組織プロセスとプロジェクトプロセスの違いや関係、およびテーラ
  リングなど
・プロセスの構成要素
  - 定義 ⇒ 実践 ⇒ 改善
  - 組織プロセス プロジェクトプロセス テーラリング
  - インプット アクティビティ アウトプット 責任 役割
・設計・製造・テスト・構成管理等の技術

自分達の開発プロセス(プロジェクトプロセス)を定め、改善して行
くためにはこれらの原理原則をきちんと理解しておくことが必要です
が、曖昧なまま進めているプロジェクトが多いのではないでしょうか。
開発プロセスモデル名称は聞いたことがあったり、なんとなくこんな
ものだろうくらいのイメージを持っている人は多いと思いますが、そ
のモデルを自分達のプロジェクトにどうフィッティング(テーラリン
グ)するかとなると、先輩のやり方を真似たり、スタッフ組織(品質
管理等)が提示した通りにやったりすることが多いのではないでしょ
うか。
原理原則は、本人が腹落ちしない限り有効に活用出来ないものです。
ですから、一過性の研修程度では、なかなか広まらない類のものです。
それでは、如何にして広めていくか。各社、いろいろな取り組みをさ
れていると思いますが、お薦めなのは、「仲間を作る」ことです。伝
道師が現場を回る、研修のフォローアップを頻繁に行う、テーマ毎の
組織内コミュニティを作る、などなど、本人の周りに仲間が存在する
場を作ることが攻を奏することが多いです。

一方、目的と言うとすごく漠とした感じを受けてしまうかも知れませ
ん。しかし、開発技術者の目的とエンドユーザの目的は明らかに異な
ります。更に、顧客の上位管理層や担当者、開発組織の上位管理層や
リーダ、それぞれの目的も異なる中、どの目的に沿って行くのか、そ
の判断によって開発プロセスも変わってくるはずです。特に、開発側
の関係者にとって、エンドユーザや顧客の目的は、ついつい見失いが
ちです。また、顧客側の関係者にとって、開発側の目的は理解し難い
面があります。こういったギャップを埋めるため、開発側は一歩半、
顧客側は一歩、歩み寄ることをお勧めします。

このメルマガを読んでいる方には当たり前のことかも知れませんが、
開発技術者や上位管理層、また、顧客関係者を含め、これらのことを
きちんと理解している人がどれくらいいるのでしょうか。少なくとも
私がいた会社では少数派だったように感じています。それでも重厚長
大な従来型の開発プロジェクトでは、開発プロセスが多少不適切でも、
時間的余裕や人的パワーで何とか乗り切ることができるケースもあり
ました。しかし、昨今の開発スピードや変化に対応しようとすると、
適切な開発プロセスを定めなければすぐにプロジェクトが軌道を外れ、
歪んだ形になってしまいます。だからと言ってアジャイル開発だけが
重要と言うつもりはありません。そのプロジェクトにとって大切な目
的を関係者の間で共有し、適切なプロジェクトプロセスを定め、かつ、
遂行する中で改善を行うことが重要です。そして、これらのことにつ
いて、その必要性を関係者全員で如何に共有するか、そこに注力する
ことがプロジェクトの成功に結びつくのではないかと考えます。

磯野 聖(フリーランス(JASPIC分科会会員))

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本欄のコラムを執筆していただける方、大募集します!
 ~SPI活動を通じて感じたこと、気づいたことをみなさんと共有
   してみませんか?~

執筆希望の方は下記の執筆要領をご確認の上【タイトル】【本文】
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※内容については必要に応じて体裁調整などの修正を行う場合が
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  ・著作権上の問題をクリアし、他ブログやサイトなどに掲載
    されていないもの
  ・氏名の掲載がNGまたは抵抗のある方はペンネームでも可能

 ◆宛先
   PR-infoアットjaspic.org

執筆に関するご質問やご意見などについてもお寄せください。
皆様の活発な投稿をお待ちしております!

執筆して頂いた方には、JASPICロゴマーク入りの「測量野帳」をプレ
ゼントいたします。
https://www.kokuyo-st.co.jp/stationery/fieldnote/lineup/

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 ◆4. SPI Japan 2022 実施報告
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2022年10月5日-7日で“「つづける」 ~カイゼンへの情熱を胸に未来
へ踏み出そう!~”をテーマに SPI Japan 2022を開催いたしました。
一般発表22発表の中から以下の方々が受賞されました。(敬称略)

■最優秀賞
  技術ナレッジのグローバル共有化の仕組み構築
     赤松 康至(オムロン株式会社)

■実行委員長賞
  アジャイル開発における品質保証移行モデルの提案と実践
  ~ホップ!ステップ!ジャンプ!アジャイル開発における
    現実的な品質保証のあり方とは~
     石井 裕志(株式会社東芝)

■プログラム委員長賞
  エンハンスメント部門における働きがい向上の取り組み
  ~1年で働きがいポイント32%UPの成果を生みだした
    各種取り組みについて~
     川野 いずみ(TIS株式会社)

なお、発表資料は11月末を目途にJASPIC Webサイトに掲載いたします。

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 ◆5. SPI Japan 2023 のご案内
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毎年実施しておりますSPIに関する国内有数のイベント、ソフトウェア
プロセス改善カンファレンス(SPI Japan 2023)の開催についてお知
らせいたします。

  ■日程:2023年10月11日(水)~13日(金)
  ■場所:朱鷺メッセ(新潟県新潟市)(オンライン併催も検討中)

皆様からの改善活動の成果や失敗から得た知見などの発表やディスカッ
ションを予定しております。詳細は決定次第JASPICホームページにてご
案内いたします。

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 ◆6. 会員募集
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JASPICは、現在、17社の法人会員および個人の会員によって構成され
ています。SPIの技術や活動の進め方を学びたい、議論したいという
法人会員、個人会員を募集しています。
詳しくは、次のサイトを参照してください。

  ■入会について
    http://www.jaspic.org/organization/join_us/
  ■会員と運営体制
    http://www.jaspic.org/organization/members/

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 ◆編集後記
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メルマガ編集担当のA.Kです。
今年は猛暑の夏でしたが、10月になりようやく秋らしい天気で過ごし
やすくなりました。秋と言えば、やっぱり食欲の秋。中でも私が好き
なのは栗です。SPI Japanが無事に終わった自分へのご褒美にモンブラ
ンを買って食べました。旬の和栗を使ったモンブランは甘くて贅沢な
味わいでした。
モンブランはフランス語で「白い山」という意味で、アルプス山脈の
最高峰「モンブラン」がその由来だそうです。上に降りかけられる白
い粉砂糖は雪を表しているんだとか。
そして、毎年父の日と同じ6月第3日曜日は「モンブランの日」なのだ
そうです。「母の愛は海より深く、父の恩は山より高く」の言葉から、
モンブランを父の日に送る習慣を広めたいという願いがこめられ記念
日に制定されました。まだしばらく先ですが、来年の父の日にモンブ
ランを送るべく、美味しいモンブランを探そうと思います。栗だけで
なく、さつま芋や苺や抹茶など様々な味があるので迷いますね。
食欲の秋ですが、太りすぎには要注意です。スポーツの秋とも言いま
すから、近所の山にハイキングにでも行こうかな。

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 JASPIC メルマガ 2022年10月号
 発行:日本SPIコンソーシアム http://www.jaspic.org/
 お問い合わせ先:infoAアットjaspic.org
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