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 ◆ JASPIC メルマガ 2019年12月号 ◆
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本メルマガでは、定期的に日本SPIコンソーシアム(JASPIC)主催のイ
ベント情報やJASPIC関係者によるコラム等をまとめてお伝えします。

* SPI(Software Process Improvement):ソフトウェアプロセス改善

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 ◆目次
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 1. JASPICアジャイル分科会よりお知らせ
 2. これから開催するイベント
 3. イベント実施報告:SPIトワイライトフォーラム  2019年9月
 4. SPI通信の紹介
 5. コラム:和田 憲明(富士通)
           「見える化は改善の道具」
 6. SPI Japan 2019を無事に終えて~実行委員長からの挨拶~
 7. SPI Japan 2020のご案内
 8. 会員募集

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 ◆1. JASPICアジャイル分科会よりお知らせ
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JASPICアジャイル分科会のホームページを公開しました。
「アジャイル開発スタートアップキット」もリリースしていますので、
ぜひご覧ください。

JASPICアジャイル分科会ホームページ
http://www.jaspic.org/activities/sig/319-agile/

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 ◆2. これから開催するイベント
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JASPICの新年度は12月から開始となります。今年度は下記のイベント
を予定しております。

●JASPIC例会(JASPIC会員限定です)
  実施日時:2/12(水)、4/14(火)、 7/9(木)、11/10(火)、12/9(水)

●JASPIC合宿(JASPIC会員限定です)
  開催日程:6月予定

●SPIトワイライトフォーラム
  開催時期:年3~4回程度予定(日時未定)関西開催を含む

●SPI Japan 2020(静岡県沼津市 プラサヴェルデ)
  開催日程:10/14(水)~16(金)

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 ◆3. イベント実施報告:SPIトワイライトフォーラム  2019年9月
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IoT機器・サービスの増加に伴ってセキュリティ対応がますます重要に
なってきています。
自動車業界においても、Jeepのハッキング事例、更にはコネクテッド
カーや自動運転などの自動車機能の高度化によって、セキュリティ・
リスクへの対応が重要課題となってきています。
国連の自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)において自動車サイ
バーセキュリティ法規が策定され、また、2020年の発行を目指してIS
O-SAE21434の標準化も進んでいます。
今回は、こうした背景を踏まえ、「自動車サイバーセキュリティ法規
対応に求められるプロセスと分析技術」をテーマに、DNV GLビジネス
・アシュアランス・ジャパン株式会社 松並氏にご講演頂きました。
講演では、まず自動車業界を取り巻くセキュリティ背景から始まり、
UN-ECE WP.29およびサイバーセキュリティマネジメントシステム(CS
MS)の概要を紹介頂きました。
そして、セキュリティリスク対応を行う上で最も頭を悩ますであろう
リスク分析について、分析手法の比較、実践例を交えて詳しく説明頂
きました。
自動車のセキュリティという比較的限定された領域のテーマでしたが、
一般参加者11名を含む23名の方にご参加頂き、CSMSやリスク分析につ
いて活発な議論がなされました。また、フォーラム終了後は、恒例の
意見交換会で本音トークも行われ、大変充実したセッションになりま
した。

トワイライトフォーラムでは、JASPIC発信、参加者ニーズ、トレンド
の三つの観点からテーマ選定を行っています。取り上げてほしいテー
マ等ございましたら文末のお問い合わせ先までご連絡ください。

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 ◆4. SPI通信の紹介
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JASPICは2020年に20周年を迎えます。これを記念し、JASPICをさらに
知っていただくために、20周年記念新聞「SPI通信」を発行します。
デジタル時代の今だからこそ、紙の新聞の手渡しと、気軽な会話から
生まれるコミュニケーションも大切にしたいと考えています。
今回、第1号が完成しました。既にSPI Japanなどで配布していますが、
広く読んでいただくために、「SPI通信」を職場などで配っていただけ
る方には送付いたします。(送料はJASPICで負担します。)
住所/氏名/部数(10部以上でお願いします)を次のアドレスにメール
してください。

newspaperアットjaspic.org

なお、現在第2号も企画中です。既にお読みの方はこちらもお楽しみに。

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 ◆5. コラム:「見える化は改善の道具」
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私はアジャイル開発の推進に役立てようと、トヨタ生産方式に注目し
て、書籍を読んだり関係者に話を聞くなど、いろいろと調べていまし
た。15年ほど前、トヨタOBの黒岩さんが講演で「見える化は管理の道
具ではなく改善の道具」と話していて、うまく理解できなかったこと
から始まった話をします。

私は「見える化」を、様々な情報を誰からも見えるようにして、遅れ
進みなどを早く発見して改善する、改善の道具じゃないかと思ってい
たのですが、どうやらそれは「管理の道具」に留まっているらしいこ
とがわかりました。しばらく悩んでいましたが、その答えは、やはり
工場にありました。工場にはアンドンという仕掛けがあります。信号
機のようなもので、アンドンがある場所の状態によって光る色が変わ
ります。青=正常、黄=異常、赤=不良、です。実際には、点滅などもあ
るようですが簡略化します。

私は実際に工場に出向き、アンドンを使って「見える化は改善の道具」
を実現している様子を見聞きし、とても驚きました。工場の方々には
当たり前のことかもしれませんが、私はSE部門なのでそんなことは考
えたことがなかったのです。例えば、組み立てラインで青が続いてい
る状態は、普通の感覚だと「良い」ですが、工場では「ムダがある」
と解釈します。おそらくバッファがたくさんあるから、多少の問題が
起こってもバッファで吸収されて青が継続しているのだろう、すなわ
ち「改善のネタがある」と見なします。

そこで改善推進者は組立ラインに対して様々な施策をおこなうことで、
アンドンが「黄」になるような状況をあえて作り出し、アンドンの点
いたところに改善ネタがあることをあぶりだします。さて、どのよう
な施策が考えられるでしょうか?

私が工場で教えてもらったのは、「ベルトコンベアの速度を少しアッ
プする」でした。速度をアップすることで、これまで間に合っていた
作業が間に合わなくなる事象が発生します。すると作業者が「黄」を
点灯させ、改善ネタを見つけることができます。

また、バッファの許容量を減らして溢れさせます。バッファは作業者
間の仕掛品の数であり、その許容量を減らす策として工程内かんばん
の数を少なくする、などです。私が見たのはその工程内での仕掛品を
置く台車がかんばんの役目をしていました。台車の数を減らすと仕掛
品を置く場所がないので、次の作業に進めず、作業者がヒモを引いて
アンドンの色が変わります。これもひとつの策です。

いわゆる十分な水位がある時では気づかないことが、水位を下げるこ
とで、隠れていた様々な岩が顔を出します。まさにそれを工場でリア
ルにやっていることに感動しました。上記の例えでは水位がかんばん、
問題検知がアンドンで、「見える化は改善の道具」です。一つは今の
状態を見えるようにすることで、もう一つはよりよい姿(目標)を見
えるようにすることです。うまくいっていないことだけでは先が見え
なくて、うまくいっている状態が見えていることが、それに向かって
改善が進むポイントだと思います。

そして次のステップが「問題を明るみに出す(隠さない)」の壁です。
Agile Japan 2015のテーマを「失敗から学ぶ、成功につなげる」にし
たのも、アジャイルの中心には改善があり、失敗を隠してしまうこと
がアジャイル普及の大きな阻害要因になっていると実行委員達で合意
したからです。

アンドンが改善の道具として機能するためには、問題が発生したら現
場の作業者がヒモやボタンを使ってアンドンを付けて合図をしリーダ
を呼ぶことが大切です。すなわち「問題を隠さない」ことが大切と書
きました。しかし人はどうしても問題を隠してしまいがちです。作業
が間に合わなくなると、普段よりも無理をして作業し、なんとか間に
合わせようとします。ヒモを引くと叱られると思ってしまいますよね。
でも、無理をするといつかほころびが出て、品質低下につながってし
まいます。無理をせずにヒモを引く、この習慣が根付くには、時間と
労力が掛かります。トヨタとGMの合弁会社であるNUUMIでは、アメリカ
の作業者がアンドンを付けてくれるまで後にトヨタ社長になる張さん
が言い続けて半年かかったそうです。工場トップがフォローして半年
ですから、人の価値観を変えるのは時間と手間がかかります。失敗を
組織でフォローするプロセスを確立することが大切です。

まとめです。ソフトウェアの設計/開発は単純ではありませんが、少
しでも良くするためのヒントをあらゆる分野から探すことは大切です。
アジャイルは繰り返しプロセスを持つので、繰り返しでは多くのノウ
ハウを持つ工場から学ぶことがたくさんあると感じています。実際、
Kent Beck のXP 2nd では「トヨタ生産方式」という章が追加されまし
たし、アジャイルの海外の研究者/実践者は、日本に来るとトヨタの
工場を見学して、ヒントを持ち帰ろうとしています。みなさま、工場
見学の機会があれば、上記の視点で眺めてはいかがでしょうか。

和田 憲明(富士通)

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 ◆6. SPI Japan 2019を無事に終えて~実行委員長からの挨拶~
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SPI Japan 2019を10月9日から11日の三日間、京都にて開催しました。
今年もたくさんの方々にご参加いただき、本当にありがとうございま
した。
今年のテーマは、
「つなげる ~共通性を見つけて取り組みを体系化しよう!~」
でした。

・基調講演、招待講演、トーク&納得セッションは、テーマに合致した
内容になっていたでしょうか? 

・発表された改善事例から、みなさんの課題解決に役立つような何らか
「つながり」を見出すことができたでしょうか?

この2つの質問にYesの文字が思い浮かぶなら、スタッフ一同これほどう
れしいことはありません。

開発現場とのコミュニケーションに悩んだら、伊藤先生(基調講演)のエ
スノグラフィーの話や、細谷さん(招待講演)の抽象化の話を、思い出し
ていただければと思います。

また、一般発表セッションの内容は以下のリンク先から参照することが
できます。
http://www.jaspic.org/events/sj/spi_japan_2019/
ぜひ、当日参加できなかったセッションの内容も参照して、さらなる
「つながり」を見出していただければと思います。

今回参加されなかったみなさんも、上記リンク先から発表内容やイベン
ト全体の概要をご参照いただき、次回以降の参加を検討していただけれ
ば幸いです。

文末になりましたが、今回のカンファレンスにご参加及びご協力頂いた
すべての皆様に、厚く御礼申し上げます。

次回のSPI Japan 2020、沼津でお会いしましょう。

SPI Japan 2019
 実行委員長   中森 勝
 副実行委員長  林 好一
 プログラム委員一同

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 ◆7. SPI Japan 2020 のご案内
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毎年実施しておりますSPIに関する国内有数のイベント、ソフトウェア
プロセス改善カンファレンス(SPI Japan 2020)の開催日と開催場所
が決まりました。

  ■日程:2020年10月14日(水)~16日(金)
  ■場所:プラサヴェルデ(静岡県沼津市)
          https://www.plazaverde.jp/

皆様からの改善活動の成果や失敗から得た知見などの発表やディス
カッションを予定しております。詳細は追ってご案内いたします。

http://www.jaspic.org/events/sj/spi_japan_2020/

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 ◆8. 会員募集
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JASPICは、現在、16社の法人会員および個人の会員によって構成され
ています。SPIの技術や活動の進め方を学びたい、議論したいという
法人会員、個人会員を募集しています。
詳しくは、次のサイトを参照してください。

  ■入会について
    http://www.jaspic.org/organization/join_us/
  ■会員と運営体制
    http://www.jaspic.org/organization/members/

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 ◆編集後記
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メルマガ編集担当のA.Kです。

もうすぐ2019年が終わろうとしています。読者の皆様にとっても色ん
なことがあった1年だったのではないでしょうか。
日本でも様々なことがありましたが、その中でも元号が平成から令和
に変わり、天皇陛下の即位がありましたね。11月に天皇皇后両陛下の
祝賀御列の儀(パレード)がありましたが、私は当日急遽思い立って
観に行ってきました。桜田門付近でパレードの様子を観ていましたが、
大変混雑していたのもあり一瞬だけですがオープンカーに乗る両陛下
を観ることができました!他にも大嘗宮一般参観に行かれた方や天皇
陛下御即位記念貨幣を引き換えに行かれた方など、読者の皆様の中に
は各催しに行かれた方も多いのではないでしょうか。日本中が祝賀
ムードでなっているのもあり、新元号に変わったことが馴染んできた
ように感じます。
また9/20~11/2にかけてラグビーワールドカップ2019が日本で開催さ
れ、こちらも大変盛り上がりましたね。なんといってもラグビー日本
代表が初のベスト8!!テレビ中継ではラグビーのルールがテロップで
解説されていたのもあって、ラグビーのルールを知らない人でも楽し
めるよう工夫がされていて、お陰で私も楽しく試合を観ることができ
ました。
2020年は東京オリンピックが開催されますが、どんな年になるでしょ
うか?各競技の日本代表選手たちの活躍に期待です。ちなみに私は江
ノ島で開催されるセーリングを観に行く予定です。

今年1年メルマガにお付き合いいただき、ありがとうございました。
素敵な年末年始をお過ごしください。
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 JASPIC メルマガ 2019年12月号
 発行:日本SPIコンソーシアム http://www.jaspic.org/
 お問い合わせ先:infoAアットjaspic.org
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