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 ◆ JASPIC メルマガ 2019年4月号 ◆
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本メルマガでは、定期的に日本SPIコンソーシアム(JASPIC)主催のイ
ベント情報やJASPIC研究員によるコラム等をまとめてお伝えします。

* SPI(Software Process Improvement):ソフトウェアプロセス改善

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 ◆目次
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 1. SPI Japan 2019 発表募集のご案内と早期宿泊先確保のお願い
 2. これから開催するイベント
 3. イベント実施報告: SPIトワイライトフォーラム 2019年3月
 4. コラム:笠井 則充(三菱電機株式会社)、森崎 修司(名古屋大学)
           「支援部門と開発部門の適正な関係
             ~製造業のシステム開発の視点から」
 5.会員募集
 
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 ◆1. SPI Japan 2019 発表募集のご案内と早期宿泊先確保のお願い
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毎年実施しておりますSPIに関する国内有数のイベント、ソフトウェア
プロセス改善カンファレンス(SPI Japan 2019)本会議の発表募集を
開始しました!

  ■日程:2019年10月9日(水)~11日(金)
  ■場所:京都テルサ(京都府京都市)
          http://www.kyoto-terrsa.or.jp/

  ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  近年の海外からの観光客の増加などで、京都付近での宿泊先の確
  保は、日程が近づくほど困難になることが予想されます。
  カンファレンスに参加予定のみなさまは、早めに宿泊先を確保さ
  れることをおすすめします。
  ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

今年のテーマは

「つなげる」  ~共通性を見つけて取り組みを体系化しよう!~

です。

開発現場に寄り添い、特定の問題にフォーカスした個別の取り組みは、
そこから共通性を見いだして一般化することで、適用範囲を広げるこ
とができます。そして、それらの取り組みをインプットとアウトプッ
トをつなげて体系化すれば、取り組みの影響が伝搬していくので、活
動の価値は加速度的に高まっていくはずです。
テーマにはそんな期待が込められています。 

SPI Japanは、関係するすべての方々が(発表者、参加者、そして運営
スタッフも)お互いを理解し、高め合うことができる場所です。 
発表されるみなさまの取り組み内容は、きっとその場を共有したひと
りひとりが改善活動を体系化する中にさまざまな形で取り込まれ、影
響を与え続けることでしょう。 

当カンファレンスでは、皆様の発表を心よりお待ちしております。
締め切りは5月31日(金)を予定しています。
詳しくは、SPI Japan 2019のホームページをご覧ください。 

http://www.jaspic.org/events/sj/spi_japan_2019/

秋の京都でお会いしましょう。

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 ◆2. これから開催するイベント
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●JASPIC合宿(JASPIC会員限定です)
  日  時:2019年6月21日(金)13:00 ~ 6月22日(土)15:00
  場  所:大阪府吹田市
  内  容:1. 講演
             (JASPIC 赤坂理事長、NTTデータ 遠藤様)
        :2. 議論&納得セッション
             (分科会成果物のコア資産化についての議論)
             など

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 ◆3. イベント実施報告: SPIトワイライトフォーラム 2019年3月
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今回は、NTT研究所の丹野さんに「テスト自動化の基本的な考え方と
NTTにおける研究開発の紹介」というテーマで二部構成の講演をして
いただきました。

第一部では、主要な論文のサーベイをもとに、テスト自動化技術を構
成する技術の紹介と最近の動向についての説明がありました。具体例
を交えた分かりやすい内容でした。参考文献もしっかり載っています
ので、資料としての価値も非常に高いです。ぜひ参考にしてください。
資料は、講演タイトルのリンクからダウンロードできます。

http://www.jaspic.org/events/twilight/2019-03/

第二部では、NTTにおける研究開発の紹介として、(1)回帰テストの自
動化を支援する技術と(2)NTTグループにおける普及展開活動の2つの説
明がありました。技術としては、“テスト設計/実装の支援:Regumo”
と“テスト結果確認の支援:ULTDiff”をデモを交えながら紹介してい
ただきました。どちらの技術(ツール)ともに、開発者のニーズに基づ
いた実践的な技術(ツール)でした。いかに開発の現場で活用できるか、
役に立つか、という視点を持った技術開発でありとても参考になりま
した。

普及展開と技術開発(論文もしっかり投稿し採択されています)を両輪
とした活動であり、企業の研究所としてとてもうまく機能していると
思いました。

フォーラム終了後は、恒例の懇親会に行きました。21時~22時半と短
い時間でしたが、たくさん飲み、たくさん食べ、たくさん話をして、
大いに楽しみました!

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 ◆4. コラム:「支援部門と開発部門の適正な関係
                ~製造業のシステム開発の視点から」
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システム開発において支援部門による客観的な評価と開発部門の専門
知識による評価のバランスを適正にすることは重要です。ハードウエ
ア中心の開発とソフトウエア中心の開発の両方を多数見ることができ
たので、両者における評価のバランスの違いを経緯や背景(コンテキス
ト)とともに共有したいと思います。

システムを構成する機器などの製品開発において、ソフトウエアの占
める割合はハードウエアに対して増えています。ソフトウエアの製造
プロセスで作られ、同じハードウエア構成で機能の追加や変更が可能
なFPGAなどのハードウエア部品が占める割合も増大しています。これ
らの部品が普及していなかった時代の製造プロセスでは、電気設計、
機械設計、基板製造、部品配置、配線取り回し、筐体組込みなどそれ
ぞれのプロセスを異なる部門で担当していました。こうした開発では
プロセスと部門を特定しやすく、各部門が加工し製品を組み上げてい
くことで、製品の管理としての全体工程やプロセス間のインタフェー
スとなりうる図面の出図時期などが可視化されやすい状況にありまし
た。また、棚卸高の管理といった経理面からの第三者の目もあり予実
が可視化されやすかったと思われます。

これに対し購入した計算機に開発したソフトウエアを搭載するような
製品形態では、部門間の仕切りは殆どが委託元と委託先の境目に限ら
れるため、全体工程の柔軟性は高くなる一方で、工程遅延による影響
を受ける部門が少なくなることにより計画通りにプロセスが完了して
いなくても可視化されにくく、計画を守ることの優先順位が上がらな
いことがあります。また、ソフトウエア開発では全体工程からみた各
プロセスの実行開始計画を遅めに設定(必要以上のバッファを設ける)
することで第三者検証部門からの指摘を少なくすることもできてしま
います。ソフトウエア開発プロセスにおいては、柔軟性を維持しつつ
適切に第三者の目が届くようにすることで納期を守れるよう支援部門
と開発部門が適切な方法を考えなければなりません。

ソフトウエア開発工程の遅延を防ぐには、プロセス毎に品質の高い成
果物を生成することとプロセス毎の期間(後続プロセスへの移行タイミ
ング)を計画通りに行うことが代表的な解決法です。前者は開発部門で
のレビューと第三者による検証で、後者は支援部門(第三者検証部門)
が客観的にチェックする方法があります。これらをうまく組合わせる
ことで、工程遅延や誤りの流出による手戻りを減らすことができるよ
うになります。

ハードウエア製造プロセスでは、進行に従って製品が各担当部門に受
け渡されていきますが、ソフトウエア製造プロセスでは、第三者検証
部門がこれらのプロセスの実施タイミングを確認して対応を促します。
具体的には、開発部門(ソフトウエア設計者)がプロジェクト開始時に
立てた開発計画書に記載されている各プロセスの実施期間を第三者検
証部門で週次といったペースで定期的に確認します。次のプロセスへ
の移行が計画から遅延しそうになったり遅延していたりする場合に、
計画の改定が可能な場合は改定を依頼し、困難な場合はコンティンジ
ェンシー計画の実行を促すなどして工程遅延を防げるようになります。
プロセスが正しく行われたかを確認するためには、そのプロセスに参
画して、開発部門の視点で仕様書などの成果物が正しく作られている
かを確認する方法と、そのプロジェクトに直接関わっていない支援部
門が第三者の立場、プロセスの外部から成果物を確認する方法があり
ます。前者は成果物に対する内部レビュー、後者は第三者検証が該当
します。内部レビューについては、表記上の誤りなどシステム開発に
おいては本質的でない誤りと、利用者に大きな損害を与えてしまう重
大欠陥のような信頼性に大きく影響を与える誤りを分けて扱うことが
重要です。第三者評価は、プロジェクトや仕様などの詳細を把握して
いないため、客観的で公平な評価を行うことができます。また、利用
者やソフトウエアの特性が大きく異なるような場合も共通的に検証す
ることができるため、評価のばらつきが少なくなること、第三者とし
て検証するために客観的な指標(品質メトリクス)を用いることにより
偏りの少ない検証ができるというメリットがあります。品質メトリク
スは、対象とするソフトウエアの想定規模(新規分、改造分、流用分)
のそれぞれから算出される指標値に対して、仕様書の頁数、レビュー
作業時間、レビューで検出した誤り数、想定されるテスト項目数、そ
れぞれについての密度(規模に対する値)を使っています。これが一
定の範囲内に入っている場合、その成果物の品質が妥当であると判定
します。妥当でないと判定された場合には、要因を支援部門と開発部
門が一緒に考えます。

学位取得のために多数のプロジェクトについて第三者検証を行ってき
た経験を整理する機会がありました。その際の気づきとして、新規に
開発したソフトウエアと流用度の高いそれに対して行われた誤り混入
分析を比較すると、前者は混入フェーズと発生フェーズが同じかまた
は近い、「浅い混入」が多く、後者では要求分析など上位設計で混入
し、結合試験やシステム試験など下流プロセスで発生する「深い混入」
がより多く見られました。浅い混入に対しては開発部門のレビューに
よって検出し、深い混入に対しては、支援部門の分析記録を開発計画
書から確認して品質メトリクスの評価が低かったプロセスやその成果
物を再レビューしたり再検証したりするといった役割分担が考えられ
ます。

こうした役割分担や工夫をすることで、開発部門と支援部門の適正な
関係を意識しつつ納期遅延の防止や品質向上につながると思います。
本コラムではハードウエア中心の開発からソフトウエア中心への変化
とともに役割分担や工夫を紹介しました。皆様の現場ではどのような
変遷や背景にもとづいて開発部門と支援部門が力を合わせているでし
ょうか。

笠井 則充(三菱電機株式会社 通信機製作所 情報保全監理部 保全課)
森崎 修司(名古屋大学 大学院情報学研究科)

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執筆に関するご質問やご意見などについてもお寄せください。
皆様の活発な投稿をお待ちしております!
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 ◆5. 会員募集
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JASPICは、現在、14社の法人会員および個人の会員によって構成され
ています。SPIの技術や活動の進め方を学びたい、議論したいという
法人会員、個人会員、分科会会員を募集しています。
詳しくは、次のサイトを参照してください。

  ■入会のご案内
    http://www.jaspic.org/basicDocuments/Brochure.pdf
  ■会員企業と運営体制
    http://www.jaspic.org/organization/members/

入会を希望される方はお気軽にJASPIC事務局にお問い合わせをお願い
いたします。

JASPIC事務局メールアドレス:infoAアットjaspic.org

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 ◆編集後記
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メルマガ編集担当のA.Kです。
4月になってもだいぶ気温も上下しましたがすっかりこの時期らしい風
景になってきましたね。新元号も発表になり、5/1を挟んだ10連休を楽
しみにされている方も多いのではないでしょうか。
私は先日、平成最後の旅行で大阪のユニバーサルスタジオジャパンに
行ってきました。USJといえば人気のアトラクションも数多くあります
よね。開始直後に整理券を求めてダッシュしても数時間待ちのアトラ
クションもあると聞いていました。しかし、今回は事前にエクスプレ
スパスという予約のチケットを購入していたためほぼ全て待ち知らず、
お陰様で空いた時間を食事やビール(笑)を飲んで休憩するなどの時間
に割く事が出来、大満足の旅行になりました。
東京ディズニーランドでも同じような仕組みがあるようですね。
少し商売っ気は感じますが、こういった仕掛けも長時間待ちを”改善”
したいという運営側の気づきから始まったものだと思いました。プロ
セス改善が双方のWinWinにつながるいい例ですね。
皆様もすばらしいゴールデンウィークをお過ごしください。

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 JASPIC メルマガ 2019年4月号
 発行:日本SPIコンソーシアム http://www.jaspic.org/
 お問い合わせ先:infoAアットjaspic.org
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