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 ◆ JASPIC メルマガ 2017年2月号 ◆
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本メルマガでは、定期的に日本SPIコンソーシアム(JASPIC)主催のイ
ベント情報やJASPIC関係者によるコラム等をまとめてお伝えします。

* SPI(Software Process Improvement):ソフトウェアプロセス改善

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 ◆目次
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 1. 分科会の活動紹介
 2. イベント実施報告:プロセス改善の輪を広げる
                     (TSPIC(台湾)との交流)
 3. コラム:森田 祥男(ゴールドラットコンサルティング)
           「(TOC特集1/5)なぜマツダは復活できたのか」
 4. SPI Japan 2017のご案内

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 ◆1. 分科会の活動紹介
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JASPICでは、あるテーマに対して、興味を持つメンバが集まり、一年
間にわたって議論する場として分科会を作り、その中で自分たちで計
画をたて、議論を深めるという活動を実施しています。この活動で作
成した成果物は、JASPIC会員企業のメンバが活用できるように提供さ
れます。また、その成果は、SPI Japan などでJASPIC会員企業以外に
オープンに公開していきます。

2017年度(2016年12月~2017年11月)は、次の14の分科会です。

・SPI推進課題分科会 
・ソフトウェアプロセス改善知識網分科会
・SPC(Statistical Process Control)分科会
・SPI現場ノウハウ交換分科会
・コア・コンピテント・チーム研究会
・プロダクトライン分科会
・人材育成分科会
・関西分科会
・要件定義プロセス分科会
・SPI戦略分科会
・IDEALモデル実践研究分科会
・ECQA連携検討分科会
・オフショア分科会
・アジャイル分科会

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 ◆2. イベント実施報告: プロセス改善の輪を広げる
                        (TSPIC(台湾)との交流)
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2015年春に、SPI Japan 2015 (SJ15) に参加したいという問い合わせ
から、TSPIC (Taiwan Software Process Improvement Consortium)
との交流が始まりました。交流の目的を次のように述べていました:

TSPIC considered that SPI's activities in Taiwan need to
exchange with the other country in asia, especially JAPAN.
So this is the reason why TSPIC is starting to exchange
with JAPAN.

何通ものメールでのやり取りを経て、2015年10月に姫路で開催された、
SJ15 にTSPIC の secretary である、Mr. Lo, Yin-Chia が来日しまし
た。SJ15 の雰囲気を味わってもらうとともに、日本と台湾におけるソ
フトウェア開発やSPIに関する状況を紹介し、活発な意見交換をしまし
た。SPIに関して言えば、CMMIを活用したプロセス改善活動は広まって
きているものの、小さな組織での取り組みが多いため、CMMIをより良
く活用するための実践方法や事例に興味を示していました。

2016年は、4月に台中で開催された TSPIC annual meeting に、JASPIC
から、運営委員長と副運営委員長の二人が参加しました。台湾では、
大学との交流、業界団体との意見交換会などの場も設定され、多くの
方々と幅広く意見交換が出来ました。SPI活動に対して、熱心に活動し
ていることが分かりました。また、日本からのトレーニングやコンサル
ティングの実施、実践事例の紹介などに対して大きな期待を持っている
ことも分かりました。台中での滞在期間中、台中で有名なお茶屋さん
(HWA GUNG TEA)にも案内され、とても美味しいお茶をご馳走になりまし
た。また、10月に富山で開催されたSJ16 にも、TSPIC から前年に引き
続き、Mr. Lo, Yin-Chia が参加し、活発な意見交換を行いました。
SJ16 が終わった翌日は、立山に一緒に登り、雄大な自然と電車の旅を
楽しみました。

このように、JASPIC では、海外の方々との交流にも積極的に取り組ん
でいます。現在、台湾以外では、ヨーロッパの ECQA (European Certi-
fication and Qualification Association:欧州認証認定機構) と交
流を深めており、今後、ソフトウェア開発やプロセス改善に関連した
トレーニングや資格試験などの提供も計画しています。

今年も、5/19(金)~21(日)に台中に行き、TSPIC annual meeting に参
加する予定です。台湾におけるソフトウェア開発やプロセス改善活動
の状況を知りたい、意見交換をしたい、という方がいれば、ぜひ事務
局まで連絡をください。一緒に参加し、交流を深めてみませんか。

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 ◆3. コラム:「(TOC特集1/5)なぜマツダは復活できたのか」
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TOC特集をテーマに全5回のコラムを掲載予定で、今回はその1回目です。

ゴールドラットコンサルティングの森田祥男です。
ソニーでのプロセス改善の経験をもとに、2003年にSEPG JAPAN(SPI 
Japanの前身)で知見を発表し最優秀発表賞を頂いてから、6年連続で
登壇、2005年にはパネリストも務めさせて頂きました。

ある日、品川駅からふとソニーのビルを見上げると、終電の時間になっ
てもソフト開発部署のフロアだけが煌々と明るく、それがほぼ毎日続
いていました。彼らを何とか幸せにしたいと思い、SSA(ソニーのソフ
トウェアエンジニアの生活を明るくする)という支援組織を立上げ、
ソフトウェアCMMをツールとしてプロセス改善を推進してきました。
ソフトウェアCMMは、ISO9001のように現場をルールでがんじがらめに
縛ったり、重箱の隅をつつくような監査ではなく、現場にやる気をも
たらすフレンドリーな仕組みだったので、私はこれでソフトウェアエ
ンジニアを救えると思って本気で取り組んできました。現場からもと
ても感謝されました。

その後、CMMを統合したCMMIに置き換わった時に、アプレイザルと呼
ばれる審査のやり方が大きく性悪説に変わりました。ある国でレベル
5を1年やそこらで達成するといった不正まがいの審査が横行したから
です。証拠重視の厳格な審査となり、ISO9001の時のような、現場は
決められたことをただ守ればいいという雰囲気に戻ってしまいました。
ソフトウェアCMMで感じた改善の楽しさとやりがいは消えてしまった
のです。

CMMIは、もう現場には薦められないと思い悩んでいた頃、日本でTOC
の普及に精を出されていた岸良裕司氏(現 ゴールドラットコンサル
ティングジャパンCEO)に出会ったのです。丁度2006年のことでした。
全ソニーから200人を超えるソフトウェアエンジニアを集め、TOC理論
とそのソリューションであるCCPMによるプロジェクトマネジメントの
講演をしてもらいました。2時間たっぷり岸良氏の熱弁を聞き、目か
ら鱗が落ちたような感動を覚えました。この日を境に私は、TOC/CCPM
に傾倒していきました。

同じ時期に、マツダもCCPMの良さを発見し、活用を考えていました。
マツダは広島、山口の地場を非常に大切にする会社で、円高でも海外
に工場を作らず踏ん張ってきました。しかし経営状態はどんどん悪化、
フォードも出資を引き上げ、本当に危ない状況でした。給料が下がっ
ても、みんな踏ん張っていました。次世代のエンジンやミッションな
どのパワートレイン先行開発部隊は、わずか30名足らず。一方愛知の
T社は4000人。勝てる筈が無いと誰しも思っていました。他社がハイ
ブリッドや電気自動車に取り組んでいる中、マツダは、内燃機関の燃
費改善の一点に集中してSKYACTIVの開発に取り組んでいました。通常
5、6年かかる新車開発を、お金の無いマツダでは経営層から2年でやっ
てくれと要求がありました。そんな無茶なという状況でしたが、当時
小さいプロジェクトで工期短縮の良い成果を出していたCCPMという手
法を思い切って全面活用することに決めました。

経営層もSKYACTIVに全てを懸け、残り少ない資金を全て投入しました。
全工程をCCPMによって作成し、工期を詰めに詰め、不必要な作業や、
あったら良いなといった作業も全てやめました。マイルストーンやム
ダなルールも全て撤廃し、試作業者も最優先で支援し、判断すべき人
は、必要な時に必要な判断を行うことに徹し、とにかく工期をギリギ
リまで短縮しました。机に座って報告を聞いて指示だけしているよう
なマネジメントは皆無でした。
しかし開発途中で、いよいよ経営状況が危機的となり、あと1年縮め
てくれと更なる無茶な要求が出されましたが、CCPMのバッファマネジ
メントの効果によって、経営層も最優先でプロジェクトを支援した結
果、見事1年で完成させ、2011年SKYACTIVを搭載した最初のデミオが
発売されたのです。

品質部門は当初、短期間開発での品質不良の多発を心配していました
が、過去に比べても品質が抜群に良いという結果が出ています。
これは一体どういうことでしょうか?CCPMに取り組めば、エンジニア
が今やるべきことに集中できるようになります。マネジメントも周囲
も、エンジニアがボールを投げれば最優先で検討して直ぐに返してく
れます。こんな集中できる環境で仕事が出来れば、設計品質が良くな
るのは当たり前と言えば当たり前ですね。

マツダはこれまで、1回ホームランを打つと、後はずっと三振ばかり
でしたが、CCPMに取り組んでからは、かつて無い状況でヒットが続き、
カーオブザイヤーも総なめにしています。その結果、2013年から黒字
に戻り現在最高益を更新中です。
マツダの金井会長、小飼社長、そしてSKYACTIVの生みの親 ミスター
エンジンの人見常務からも、TOCは会社を救ってくれた、マツダが復
活できたのはTOCのお陰だと、絶賛されています。

次回は、マツダを救ったTOCの真髄についてお話します。ご期待下さい。

森田 祥男(ゴールドラットコンサルティング)

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 ◆4. SPI Japan 2017 のご案内
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毎年実施しておりますSPIに関する国内有数のイベント、ソフトウェア
プロセス改善カンファレンス(SPI Japan 2017)の開催日と開催場所
が決まりました。

  ■日程:2017年10月11日(水)~13日(金)
  ■場所:タワーホール船堀(東京都江戸川区)
          http://www.towerhall.jp/

皆様からの改善活動の成果や失敗から得た知見などの発表やディス
カッションを予定しております。詳細は下記URLにて、追ってご案内
いたします。

http://www.jaspic.org/events/sj/spi_japan_2017/

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 ◆編集後記
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メルマガ編集担当のA.Kです。
2月も下旬になり、寒さも終盤になってきました。電車の広告も段々
と春っぽい内容に変わってきていますが、最近はほとんどの方が、ス
マホを見ており以前と比べて車内の広告は見られなくなっているよう
です。特に目線を上にしなければ見えない広告は、ほとんど、効果が
ないのではないかと感じています。今後は、ネット上はもちろんです
が、スマホを見れない場所での広告掲示が効果があるのだろうなと思
いました。ただし、階段横の壁への掲示は危険です。先日も、おいし
そうな海鮮丼の広告につられて足を踏み外すところでした。階段壁へ
の掲示は食べ物以外でお願いしたいです!
寒さも残り数週間。体調管理に気を付けて乗り越えたいと思います。

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 JASPIC メルマガ 2017年2月号
 発行:日本SPIコンソーシアム http://www.jaspic.org/
 お問い合わせ先:infoAアットjaspic.org
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