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 ◆ JASPIC メルマガ 2024年12月号 ◆
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本メルマガでは、定期的に日本SPIコンソーシアム(JASPIC)主催のイ
ベント情報やJASPIC関係者によるコラム等をまとめてお伝えします。

* SPI(Software Process Improvement):ソフトウェアプロセス改善

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 ◆目次
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 1. これから開催するイベント
 2. Vivid Voices ~永田敦さんへのインタビュー~
 3. SPI Japan 2024を無事に終えて~実行委員長からの挨拶~
 4. SPI Japan 2025のご案内
 5. 会員募集
 6. コラム執筆募集

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 ◆1. これから開催するイベント
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JASPICの新年度は12月から開始となります。今年度は下記のイベント
を予定しております。

●JASPIC例会(JASPIC会員限定です)
  開催日程:2/13(木)、4/15(火)、7/11(金)、11/6(木)、12/10(水)

●JASPIC合宿(JASPIC会員限定です)
  開催日程:6月予定

●SPIトワイライトフォーラム
  開催時期:未定

●SPI Japan 2025
  開催日程:10/22(水)~24(金)
  開催場所:岡山コンベンションセンター(岡山県岡山市)

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 ◆2. Vivid Voices ~永田敦さんへのインタビュー~
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アジャイル開発での品質保証に携わっておいでの永田敦さんのインタ
ビュー、今号ではその2回目をお伝えします。

永田さん(永):
 教育というか勉強もやはり大事なんですよ。ソフトウェアってどう
 やって開発していくか。どういうスキルが必要で、自分たちに欠け
 ていたスキルは何だったのか。そういったことが分かっていなかっ
 た。だから、自分もセミナーなどに行きました。
 スティーブ・マコネル*1 がこんなことを言っていました。ソフト
 ウェアは、作っては直し作っては直しなんていうやり方ではダメだ
 と。いや今でも例えばケント・ベック*2 なんかはそういうやり方を
 しているように見えたりするんですが、この人は開発プロセスとか
 品質や設計の基準とか、全部頭に入ってやっているんですよね。そ
 ういう基準を持たない人が真似してもコードの品質が劣化するばか
 りだから、やってはいけないんです。
 そうした、ソフトウェアをちゃんと開発するためには何をどう考え
 なくてはいけないのかを分かっていないと、品質を確保するために
 は何をいつどうやるべきかも分からない。だから、勉強しなくては
 いけないんです。品質というのは、お客様を満足させるものでなく
 てはいけないんです。石川馨*3 先生の言っていらしたこともそうい
 うことでしょう。今でも通じることです。その満足というものが
 「価値」と呼ばれるようになっただけです。(先号で言及された)
 記憶装置も、価値のないものになってしまっていた。価値より手前
 の、当たり前品質を提供できていなかった。魅力品質として大容量、
 高速度があったのに。
メルマガ編集者(編):
 それで、最後にテストするだけではダメで、もっと前の方から考え
 なきゃいけないよね、となったんですね?そしてそれはお客様に価
 値を提供するためなのだと。そこに、アジャイル開発というのは、
 どう関わってくるのですか?
永:
 それは、やっぱりアジャイルテスティングの本が出てきたところか
 な。最初は、アジャイルって何だかよく分からなかった。アジャイ
 ルソフトウェア開発宣言も、何を言っているのか分からなかった。
 それどころか、けしからんことを言っていると思った。他にもユー
 ザーストーリーだって、それで要件が整理できるかよ、って。
 こんなもん見せられてやってもバグだらけになるでしょ、抜け漏れ
 も出るし、設計もテストもできないでしょ、って思いました。後日
 ジャネット・グレゴリー*4 が来日した際に、ユーザーストーリーだ
 けじゃ足りませんよね、何で補うんですか?って言ったら、コミュ
 ニケーションだ、って。
 びっくりしましたよ、コミュニケーションしないと不完全なんです
 か、コミュニケーションだって曖昧でしょう!って、帰り道ずっと
 怒っていました(笑)。そんな風に、アジャイル開発が何であるか、
 分からなかったんですが、でも、気になる存在でした。
編:
 何をやってるか分からないけど注目されているライバルみたいな?
永:
 ははは。その分からない頃に、日本科学技術連盟主催のソフトウェア
 品質シンポジウム(SQiPシンポジウム)にトム・ギルブ*5 が呼ばれ
 て、紹介してもらったんです。そして、当時の勤め先で、彼に今で
 言うアジャイルインスペクションのワークショップをやってもらい
 ました。紹介してくれたのは高橋寿一*6 さんだったんですが、トム
 は凄く有名な人だよって言われて、彼のありったけの著書を取り寄
 せて読みました。
 以後、トムに会う度に、彼の著書にサインしてもらって(笑)。
 そうやってしつこく絡んだら、相手をしてくれるようになって、ア
 ジャイルインスペクションも教えてもらいました。それから国内で
 アジャイルインスペクションのいろんなワークショップをやり始め
 たりして、あの分からなかったアジャイルがどういうものなのか、
 学ぶ機会が沢山できました。アジャイルってイテレーティブに回し
 て直していくものだというような理解から、そこで何をしようとし
 ているのかというところが、少しずつ分かってきたんです。
編:
 なるほど。その前は、ユーザーストーリーなんてあやふやな物を元
 にシステムなんか作れるかと思っておられた永田さんが、アジャイ
 ルがだんだん見えてきたら、どう思われたんでしょう?
永:
 要求仕様書って、あるじゃないですか。一つのシステムに求められ
 る要求が全部書いてある物です。ウォーターフォール型開発では、
 要求を全部書いたら次は全部の設計なので、システムの全部が設計
 できる情報つまり要求を全部きっちり書く訳です。設計情報も同じ
 ですね。実装できる全部の情報を書く。デカいんです。それぞれの
 ドキュメントを書く期間もそれなりに掛かる。いわゆる上流で漏れ
 や誤りがあると下流でとても苦労するって、ベーム*7 さんも言って
 いましたよね。だから、一所懸命みっちり書こうとする。ユーザー
 ストーリーはね、例えば二週間というタイムボックスで扱うものな
 ので、それほど情報量が多くないんですよ。そして、二週間でしょ?
 「コミュニケーション」が使えるんです。システム利用者や開発メ
 ンバと話をしたその記憶がまだ消えていない間に開発ができるんで
 す。暗黙の情報を含め、記憶、というより認識かな?が新鮮な内に
 作り、お客さんに触ってもらう。暗黙知が使えるというのは、書く
 より読むよりかなり多量の情報が使えるということだし、その方が
 圧倒的に速いんですよね。
編:
 そうなんですか?
永:
 システムを作るときに本当に大事な情報って何?って考えると、
 ユーザーがそれをどういうように使うのかというシーンなんですよ。
 これを確実に押さえないといけない。けれどもそれだけじゃ不充分
 なので、「こんな場合はどうしようか」、「エラーが起きた際の処
 理は」、「非機能要求要求の面は」とか、そうしたユーザーの使い
 方の中に表われてくることがあるんです。完璧な方法とは言いませ
 ん。ある種のバランスというものが求められる。二週間なら二週間
 で一旦動く物を提示しなくてはならない訳ですから、広すぎる範囲
 のことが入っているユーザーストーリーは扱いきれないかもしれな
 い。逆に、漏れることだってあり得ます。だからこそ、お客さんに
 触ってもらって、お客さんの希望通りに動いているかどうかという
 ことを何度も確かめるんです。失敗を早くにするんです。そして、
 漏れていた点に気がついてそれを入れて、エラー時の処理なども決
 まってくる。最初から全部を明らかにしようと思っても、つまり一
 回で済ませようと思っても、何かしら見えてないことがあるんです。

 こんな風に、一回じゃ終わらないから何度も、システムの使い方の
 小さな表現であるユーザーストーリーを出発点として、暗黙の理解
 も含めて短期間でシステムを動かして見せる。最初から完璧になん
 てできないって分かっているから、何度も見てもらって、必要なも
 のが入ったシステムにしていく。そういうことが、だんだん見えて
 きたんです。

永田さんに見えてきたアジャイル開発で品質を確保・改善するための
考え方や仕組みとは?インタビューは記事は次回、最終回です!

【脚注】
*1 スティーブ・マコネル:著書「ソフトウェア開発プロフェッショ
 ナル」の中で「作って直す」開発を批判し改善策を提示している。
*2 ケント・ベック:ソフトウェアのデザインパターン、テスト駆動開
 発、エクストリームプログラミング(XP)など、広く受け入れられ
 ている数々の概念や手法を提唱している。
*3 石川馨:日本の品質管理において黎明期から活躍、TQCの先駆的指
 導者として知られる。著書に「日本的品質管理 TQCとは何か」等が
 ある。
*4 ジャネット・グレゴリー:書籍「実践アジャイルテスト:テスター
 とアジャイルチームのための実践ガイド」の共著者。
*5 トム・ギルブ:書籍「ソフトウェアインスペクション」の筆頭著者。
*6 高橋寿一:たかはしじゅいち。ソフトウェア品質の研究および関連
 業務の経験を持ち、「ソフトウェア品質を高める開発者テストアジャ
 イル時代の実践的・効率的なテストのやり方」等、アジャイル開発
 におけるソフトウェア品質関連の著書がある。
*7 バリー・ベーム:ソフトウェア開発工数の見積手法であるCOCOMO
 モデルや、反復型の開発プロセスであるスパイラル開発モデルを提
 唱した。

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 ◆3. SPI Japan 2024を無事に終えて~実行委員長からの挨拶~
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10月16日(水)からの三日間、SPI Japan 2024 ソフトウェアプロセス改
善カンファレンスを開催しました。

今年のテーマは、
「響かせる」~未来を拓くカイゼン、一緒に探求しましょう~
でした。

去年に引き続き、対面イベントとして沼津にリアル会場を設け、一部
オンライン参加も可能な形で、たくさんの方々にご参加いただきまし
た。本当にありがとうございます。

・倉貫義人氏による基調講演では、いいソフトウェアを創るために
 「納品のない受託開発」という斬新なビジネスモデルの組織を作ら
 れた経緯や考え方に、感銘を受けた、わくわくする講演でエネルギー
 をもらったなど、非常に好評な意見をもらいました。

・一般発表の20件の改善事例発表や、2件のTSPICからの発表では、現
 場に密着した改善活動からソフトウェアプロセス改善の考え方を異
 分野に応用した事例など、技術的なヒントが得られるとともに、取
 り組みの広がりを感じ、モチベーション向上にもつながる内容でし
 た。

・トーク&納得セッションでは、オンラインでも参加可能なテーマを
 含め6つのセッションで行いました。多くの方々に参加いただき、
 その場での体験や他参加者の取り組みの状況や課題の共有を通じて、
 活発な討議が行われていました。

・意見交換会では、現地沼津での参加者が集まり、沼津の飲み物や軽
 食も楽しみつつ賑やかな雰囲気で、交流を楽しんでいただけたかと
 思います。

・和田卓人氏による招待講演は、自動テストを書く文化を根付かせる
 ための戦略と具体的な取り組み例も紹介いだだき、参加者から、説
 得力のある濃い内容で自組織に取り入れるために実践したい、上司
 を説得したい、など大変好評でした。

会場でのコミュニケーションやオンラインを通じて、参加いただいた
方々の間での議論や新たな交流、新たな気づきを得ていただける機会
として、少しでも「響くもの」がありましたらスタッフ一同、心より
嬉しく思います。

また、一般発表の発表資料は以下のリンクから参照可能です。参加さ
れた方も、参加できなかった方も、気づきの源としてご活用ください。
https://www.jaspic.org/events/sj/spi_japan_2024/

文末になりましたが、今回のカンファレンスにご参加、ご協力及びご
支援いただいたすべての皆様に、厚く御礼申し上げます。

次回のSPI Japan 2025、岡山でお会いしましょう。

SPI Japan 2024
 実行委員長     久和 恭子
 副実行委員長    八木 将計
 プログラム委員一同

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 ◆4. SPI Japan 2025 のご案内
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毎年実施しておりますSPIに関する国内有数のイベント、ソフトウェア
プロセス改善カンファレンス(SPI Japan 2025)の開催についてお知
らせいたします。

  ■日程:2025年10月22日(水)~24日(金)
  ■場所:岡山コンベンションセンター(岡山県岡山市)
    https://www.mamakari.net/    

皆様からの改善活動の成果や失敗から得た知見などの発表やディス
カッションを予定しております。詳細は決定次第JASPICホームページ
にてご案内いたします。

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 ◆5. 会員募集
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JASPICは、現在、13社の法人会員および個人の会員によって構成され
ています。SPIの技術や活動の進め方を学びたい、議論したいという
法人会員、個人会員、分科会会員を募集しています。
詳しくは、次のサイトを参照してください。

  ■入会について
    https://www.jaspic.org/organization/join_us/
  ■会員と運営体制
    https://www.jaspic.org/organization/members/

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 ◆6. コラム執筆募集
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本メルマガのコラムを執筆していただける方、大募集します!
 ~SPI活動を通じて感じたこと、気づいたことをみなさんと共有
   してみませんか?~

執筆希望の方は下記の執筆要領をご確認の上【タイトル】【本文】
【氏名】を以下の宛先まで送付ください。
※内容については必要に応じて体裁調整などの修正を行う場合が
  ありますことをご了承ください。

 ◆執筆要領
  ・1400文字前後(1行あたり全角31文字×45行程度)を目安
  ・フォーマットは自由(wordやテキスト、メール本文でOK)
  ・著作権上の問題をクリアし、他ブログやサイトなどに掲載
    されていないもの
  ・氏名の掲載がNGまたは抵抗のある方はペンネームでも可能

 ◆宛先
   PR-infoアットjaspic.org

執筆に関するご質問やご意見などについてもお寄せください。
皆様の活発な投稿をお待ちしております!

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 ◆編集後記
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メルマガ編集担当のA.Kです。
今年も終わりが近づいてますね。皆さんは年末年始をどのように過ご
す予定でしょうか?
年末といえば大掃除をする方も多いかと思いますが、この時期は、気
温が下がり、油汚れが落ちにくく、実はあまり掃除には向かない時期
と言われています。それでも1年の締めくくりとして、また長期休みが
取れる時期ということで大掃除をしようという気持ちになります。
我が家は油汚れ用にオレンジエキスを使った洗剤を長年愛用していま
す。この洗剤をキッチンはもちろんのこと、床についた頑固な汚れや
埃と油のついたシーリングファンなど、スプレーで洗剤を吹きかける
だけで、すぐに汚れが浮いてきて、あとはキッチンペーパーなどで、
拭き取るだけ。とても簡単に汚れが落ちます。ぜひ皆さんもオレンジ
エキスの洗剤を試してみてください。
お掃除が終わったら、あとは綺麗になった部屋で、お節料理にお雑煮、
お餅にお酒と、楽しい(美味しい)年始が待っています。
それではよいお年をお過ごしください。

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 JASPIC メルマガ 2024年12月号
 発行:日本SPIコンソーシアム https://www.jaspic.org/
 お問い合わせ先:infoAアットjaspic.org
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